HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報583号(2016年5月11日)

教養学部報

第583号 外部公開

<本郷各学部案内>経済学部

経済学部長 馬場 哲

経済学部への招待

http://www.e.u-tokyo.ac.jp/

東京大学ビジョン2020では、人文社会科学分野の活性化が目標のひとつとされていますが、もうひとつ文理融合も重視されています。経済学部はこの文理融合を考えるときに有利な条件を備えています。というのは、数理的・統計的な分野から思弁的・歴史的な分野までを学部のなかに揃えているからです。財政・金融などの現実の政策的課題にどう対処するかを考える実践的な分野も大きな位置を占めています。経営学やファイナンスの分野も充実しています。しかも、学部時代には、経済、経営、金融の3学科を擁するとはいえ、相互の垣根を低くして幅広い勉学ができるようにカリキュラムが工夫されています。

ゼミ(演習)や少人数講義が学部教育の要の位置を占めていることは経済学部の伝統と言えますが、卒論、さらに最近ではプロアクティブラーニング(自主ゼミ)といった講義よりも能動的な参加を求められる授業形態が重要性を増しつつあるなかで、これまで以上に教育活動の基礎単位としての意義を高めています。また、ひとつだけでなく二つあるいは三つのゼミに参加している人も増えています。

さらにいま学部が推進しているのが卓越プログラムであり、これも全学の卓越大学院構想に沿うものといえます。経済学部では、現状では約9割の学生が学部卒業後ただちに社会に出ますが、その場合でも、経済のグローバル化や学問の高度化に伴って、より専門的な知識を身につけることが求められています。国際社会で活躍するためにも、修士の学位をもつことは今後必須となると予想されます。そこで経済学部では、大学院の相互乗り入れをこれまで以上に強化して、学部時代より大学院との合併科目を計画的に履修すれば、1年で修士課程を修了できる卓越プログラムを整備しているところです。

先にも述べたように、経済学部は、文系学部ながら理系の要素も強くもっており、これまでと同じように文科二類からの進学が最も多いとはいえ、10年ほど前より進学振り分けにおいて全科類枠を採用しており、他科類、とくに文科三類、理科一類、理科二類からの進学者が4分の1を占めています。したがって、どの科類からでも経済学部に進学することが可能ですので、経済経営現象・問題に関心のある人は是非進学先として検討してもらいたいと思います。数理的なアプローチ、調査にもとづく実証的アプローチ、史資料にもとづく文献考証的アプローチなど必ず自分に合ったアプローチが見つかるはずです。

最後に経済史研究者としての個人的所感を少し書かせていただくと、近年経済学・経営学における数量的手法の比重が高まっていて、古典や本格的研究書と格闘する機会が減っているようにも思います。しかし、人間や社会を対象とする以上、それでは埋められない部分や広い意味での文化と関連づけなければ理解できない部分も大きいはずです。歴史研究でいえば、地道に史資料や文献を読んで、史実を積み重ねながら、想像力も働かせてそれぞれの国や時代の社会の歴史像を構築しようとする知的営みの価値は依然として大きく、そうしたいわば古典的なスタイルの勉学も大事にしてほしいと思います。経済学部は、そうしたニーズに十分に応える図書館や資料室を擁していることも付言しておきます。

(経済学部長/西洋経済史)

 

 

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