HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報583号(2016年5月11日)

教養学部報

第583号 外部公開

<本郷各学部案内>教育学部

副学部長 斎藤兆史

すべての営みは教育に通ず

http://www.p.u-tokyo.ac.jp/

「教育」と聞くと、多くの人が小学校、中学校、高校、大学、あるいは各種専門学校といった、教育機関としての「学校」を思い浮かべるのではないでしょうか。もちろん、学校はとても重要な教育の場です。とはいえ、学校だけで教育が完了するわけではありません。それぞれの家庭での教育も重要ですし、最近では生涯学習という考え方も広がっています。美術館、博物館、劇場、音楽堂、図書館、公民館、競技場なども、とても重要な教育と学びの場です。また、皆さんの多くは何らかの課外サークルに所属し、先生や先輩から多くのことを学び、また後輩に教えていることと思います。人は、生きているかぎり、つねに社会のなかで何かを学び、教えているのです。大げさに聞こえるかもしれませんが、人や自然の営み、また学問はすべて教育に通じていると言うことができます。その多様な教育のありようを学理的に研究し、実体験する場を提供しているのが教育学部です。

本学部には、基礎教育学専修(基礎教育学コース)、教育社会学専修(比較教育社会学コース、教育実践・政策学コース)、心身発達科学専修(教育心理学コース、身体教育学コース)の3専修・5コースが置かれています。ごく簡単に説明しておくと、教育とは何かを人文学的なアプローチにより哲学的・歴史的に研究しているのが基礎教育学コース、社会・文化現象としての教育を国際比較や異文化理解を含めた多角的な視点から考察するのが比較教育社会学コース、教育という現象あるいは作用の本質を「現場」や制度・政策との関係を通して捉える研究をしているのが教育実践・政策学コース、教育の科学的基礎を心理学の手法で実証的に研究しているのが教育心理学コース、「身体(からだ)」に関わるさまざまな教育事象について総合的・実践的な立場で研究するのが身体教育学コースです。本学部は教員養成系の学部ではありませんが、所定の単位を修得すれば教員免許状や学芸員、図書館司書の資格も取得できます。教育実習や実地研究のフィールドとしては、教育学部附属中等教育学校、交流協定を結んでいる長野県の木島平村などがあります。また、本学部卒業後の進路は、民間企業や行政機関への就職、大学院への進学など多様です。

教育学部は国際交流や学術活動の国際化にも力を入れています。国際交流室が中心となって、海外協定校との学術交流や留学生との懇談、あるいは英語による学術発表のための指導を積極的に行なっています。写真は、学術交流協定校であるストックホルム大学との共催シンポジウムに向けた、英語による発表練習の様子です。English Pre­sen­tation Club(EPC)というこの発表練習の会は、英語母語話者の講師・コーディネーターの指導の下、だいたい月に一度のペースで行なわれており、教育学部の学生なら誰でも自由に参加することができます。じつを言うと、5年前まで教養学部英語部会の英語教員を務めていた私も、アカデミック・アドバイザーとしてこの活動に関わっています。

ところで、5年前まで駒場キャンパスで主に1、2年生を相手に英語を教えていた私が教育学部で何をしているかと言うと、それまでのように英語を教えることもありますが、英語(さらには広く言語)を教える/学ぶとはどういうことかを、いわば「メタ・レベル」で研究し、教えているのです。たとえば、学校でどういう教え方をしたら生徒や学生は英語を効率よく学ぶことができるのか、あるいは個々人で何かの外国語を学ぼうとした場合、どのような効果的独習法があるのか、などを学生諸君と学理的に議論・検証しています。また、自分自身が駒場でやってきたことを「教養教育」として振り返り、議論・研究することも少なくありません。

「国家百年の計は教育にあり」とも言われますが、社会を支えるのは人であり、その「人」を育てるのが教育です。それはとても時間のかかる、そしてまたやりがいのある大事な営みです。その営みに興味のある人は、ぜひ教育学部への進学をご検討ください。

(副教育学部長/英語教育)

 

 

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