HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報590号(2017年2月 1日)

教養学部報

第590号 外部公開

<前期課程の新設科目紹介> 社会科学ゼミナール

佐藤俊樹

展開科目

展開科目の3つのゼミナールは、前期課程の基礎科目と後期課程の専門科目をつなぐために、自分が関心のある特定分野の思考様式や研究方法を少人数形式で学ぶ授業です。

社会科学ゼミナール

社会科学ゼミナールは初年次ゼミ文科の後をうけて、社会科学をより深く学ぶための少人数授業です。一年のAセメスターと二年のSセメスターに履修することができます。

教養学部の前期課程では、さまざまな分野を横断する形で、大学での学びにふれていきます。東京大学の学生、とりわけ文科系の学生には、そうした幅広い視野が特に求められてきました。そんな社会的要請にも対応したカリキュラムが用意されていますが、その分、どうしても大人数講義中心の、受け身の学習になりがちです。それに対して、社会科学ゼミナールは初年次ゼミ文科や人文科学ゼミとともに、意欲のある学生が、自分の興味関心のある分野を、自主的・積極的に学んでいく。そのための場を提供するものです。

中心的な理念はやはり“early exposure”です。すなわち、最先端の研究者でもある教員の、その研究の一端に直接ふれる。それを通じて、それぞれの学術の「真髄」を知る。とはいえ、あくまでも教養学部の前期の授業ですから、後期の専門課程や大学院の修士課程の準備や予備ではありません。知識や技法を詰め込んでいくのではなく、それぞれの分野で何をどう考えているのか、あるいは考えようとしているのか。そこを体験するのが主な目的です。

ですから、理科系の学生も履修できます。他の授業との兼ね合いもあるので、今のところ開講できるコマ数は限られていますが、教養学部以外の先生方のご協力もあおぎながら、意欲のある学生にできるだけ門戸を開いていきたい、と考えています。

そのようなコンセプトの授業なので、具体的な進め方はそれぞれの教員に任されています。今まさに取り組んでいる研究の一部を見せるものもあれば、あえて現在の研究とは直接関係ない題材を使うものもあります。話題になっている政策的なイッシューをとりあげることも、あるいは、調査のスキルのような実践的な内容を学ぶこともあります。履修を希望する人は、分野だけでなく、そうした授業のスタイルのちがいも考えながら、一番意欲をもてそうな授業を選んでください。

私自身は二年のSセメスターに「ルーマンのメディア論を読む」という授業を開講しています。ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンが尖端的なシステム論を使いながら、現代のマスメディアを解読した著作をとりあげて、少しずつ読んでいます。出席者の関心や予備知識にあわせて進めていくので、大学院レベルのつっこんだ議論になることもあれば、一年生向けの入門的な解説に近くなることもあります。進学(志望)先も社会科学系だけではなく、文学や思想、あるいは理工系と、かなり多種多様です。

教える側としては臨機応変の対応が必要になるので、実はなかなか大変なのですが、そのなかで、一人一人が自分なりに何かをつかんでくれれば、それでよい。そう思っています。

(社会科学委員会/国際社会科学/経済・統計)

第590号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報