HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報590号(2017年2月 1日)

教養学部報

第590号 外部公開

成長するトライリンガル・プログラム(TLP)

寺田寅彦

トライリンガル・プログラム(TLP)が二〇一三年度に教養学部前期課程に発足してほぼ四年が経過しました。ますます成長するTLPの現在を紹介します。

前期課程のTLPは、入学時に一定レベルの英語力を有すると認められる学生(上位一割程度)の中から希望者を募り、日本語と英語に加えてもう一つの外国語の運用能力を集中的に鍛えるために設けられています。当初は中国語のみでしたが、二〇一六年度からドイツ語、フランス語、ロシア語でも展開されることになりました。二〇一八年度からは韓国朝鮮語でもTLPを行うことが計画されており、今まさに成長しつつあるプログラムです。

この前期課程のTLPは言語によってクラス編成方法などに違いはありますが、いずれも一年次では基礎科目の一列・二列、そしてTLP用に開講されている総合科目のインテンシヴ・コースと演習を文系・理系ともに履修することになります。二年次には言語によってプログラムに少し違いはありますが、やはりTLP用に開講されているインテンシヴ・コース、演習、中級会話、中級講読といった授業を履修することになります。いずれの学年でもネイティヴ教員と日本人教員がそれぞれの指導法の特性を生かしながら授業担当をバランスよく振り分けて指導しています。

現在の定員枠は中国語が六十名、ドイツ語とフランス語が四十名、ロシア語が二十名程度となっています。TLPに参加していない学生にも各セメスターごとにTLPに参加するチャンスがあり、定員枠はあるものの一定のレベルに達している学生にひろく開かれた制度となっています。履修期間は二年次Sセメスターまでの一年半で、修了要件を満たした履修生には修了証が授与されます。

二〇一五年には教養学部後期課程にもTLPが発足しました。前期課程TLPを修了、もしくは同程度の語学力を有する学生を対象に展開されています。「〜語を学ぶ」から「〜語で学ぶ」に歩を進めてグローバル化時代にふさわしい深い教養と鋭敏な問題意識を身につけることを目指しています。

現在は中国語のみで展開されており、使用言語を中国語や英語に限って開講している東西文明学Ⅰや東西文明学Ⅱ、海外研修等の所定単位を取得することによって、後期TLPの修了資格を得ることができます。共通外国語(中国語)でもTLP向けの上級作文、上級会話、上級講読といった授業が一定の中国語能力を有する学生全体を対象に開講されていて、TLPに関心を持って中国語のさらなるブラッシュアップを目指す学生の誰もが履修できるように設計されています。

スカラシップを受けて日本を離れ、実際に現地で語学研修や学生交流などを行う企画も各言語で行われています。二〇一六年度、ドイツ語ではTLPを履修する一年生の学生が優先的に参加できるボン大学での短期語学研修が夏に行われましたが、二月にもう一度行われる予定です。フランス語ではやはり一年生を対象として二月にリヨンとパリとでディベートを通じた学生交流をするばかりでなく、ANSES(環境省に相当する仏省庁)で発表を行いレクチャーを受けることになっています。中国語ではTLPと教養教育高度化機構国際化部門のリベラルアーツ・プログラム(LAP)とが連携して、南京大学サマープログラムが二年生を対象に、中国人民大学上級研修プログラムが二年生から院生を対象に実施されています。現地での語学特訓だけではなく、さまざまな講義や学生交流、政府機関および中国企業の見学・懇談などが実施されています。ロシア語ではサンクトペテルブルク大学でのロシア語授業に加えて、現地の高校・大学との学生交流や芸術鑑賞などの活動が主に予定されています。言語や時期によって参加人数は異なりますが、十名から二十名程度の限られた人数で行われています。

グローバル化が急速に進んだ現代の世界においては、高度な英語力と少なくとももう一つの外国語の運用能力が国際的に活躍する人材に求められることが多くなっています。このような人材の育成を目指してTLPはさらなる成長と飛躍を続けています。

(超域文化科学/仏語)

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