HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報591号(2017年5月 2日)

教養学部報

第591号 外部公開

辞典案内 2017 漢和辞典

田口一郎

漢和辞典は、(1)主に漢文(中国古典文)を読むのに適したもの、(2)主に日本語の中の漢字・漢語を調べるのに適したもの、の大きく二つに分けられる。

まず(1)から。①『全訳漢辞海』(戸川芳郎監修、佐藤進他編、三省堂、第4版2016年、3000円。iOS対応、第3版3000円(税込))は、語法分析や品詞別の語義解釈に特色があり、用例・付録も充実し、このカテゴリーの決定版。②『角川新字源』(小川環樹他編、角川書店、改訂版1994年、2400円)は、小振りだが多くの熟語を収録し、堅実な説明に定評があり、現在も専門家に愛用者が多い。③『支那文を読むための漢字典』(研文出版、第9版1999年、3000円)は、漢文を読む上で非常に有用な字書、①②の補完に。小型の辞典で解決できない問題は、④『大漢和辞典』(諸橋轍次著、大修館、修訂第二版全15巻、2000年、240000円)に図書館等で当たるとよいが、完璧な辞書などなく、『大漢和』にこうある、と権威づけに使うと痛い目に遭う。漢文マニアの方は、漢和から「漢漢」に進まれては。⑤『辞源(修訂本)』(商務印書館、各版)は、中国で最も早い近代的辞書が修訂を重ねたもので信頼性抜群、歴史の厚みを感じて下さい。

(2)としては電子辞書・アプリ化もされている⑥『漢字源』(藤堂明保他編、学習研究社、改訂第5版2010年、2900円。iOS/Android対応、2800/3100円(税込))⑦『新漢語林』(鎌田正他著、大修館書店、第二版2011年、2900円。iOS/Android対応、1900円(税込))が何かと便利。⑥は収録字数が約17000字と小型辞典で最も多く、書道愛好家にお薦め。日本語における漢字語の辞典としては、五十音引きの⑧『角川現代漢字語辞典』(阿辻哲次他編、角川書店、2001年、3800円)、近代文献から用例を集めた⑨『新潮日本語漢字辞典』(新潮社、2007年、9500円)が参考になる。

漢字自体への更なる興味を満たすには、⑩『新訂 字統』(白川静著、平凡社、普及版2007年、6000円)、⑪『字通』(白川静、平凡社、普及版2014年、10000円)、⑫『学研新漢和大字典』(藤堂明保他編、学習研究社、普及版2005年、8800円)等があるが、漢字の解釈は諸説ある場合が多いので注意。

(超域文化科学/国文・漢文学)

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