HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報592号(2017年5月 2日)

教養学部報

第592号 外部公開

<後期課程学部案内>薬学部

教授 大和田智彦

日本と世界の健康を牽引する原動力
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/

薬学部とはどのような学部なのだろうかと多くの学生諸君は思うかもしれません。

薬学部は「物質」の側面から、また「生物」の側面から生命科学(ライフサイエンス)を教育・研究する学部です。医薬品(薬)と聞くと医師が処方する特殊な物のように感じますが、物質としては有機化合物です。抗体医薬を含めても有機化合物です。そのため「物質」と「生物」を関係づける学問が必要なのです。私たちの薬学部の使命(ミッション)の説明には「薬学は、医薬の創製からその適正使用までを目標とし、生命に関わる物質及びその生体との相互作用を対象とする学問体系である。本学部は創薬科学及び基礎生命科学の発展に寄与する研究者、医療行政に貢献する人材、高度医療を担う薬剤師の養成を教育研究の目的とする」と書かれています。
薬学部は薬科学科(定員の九割)と薬学科(定員の一割)に分かれていますが、一学年八十名程度の小さな学部であるため、薬学部に進学が内定したあと学部四年生になるまでは、多くの講義や実習は共通のものになっています。四年次になる際自分の希望や成績を加味して学科を決めます。それぞれの学科の特色は教育目的に明記されており、薬学がカバーすべき広範な基礎科学の教育に重点を置き、高い能力を持った研究者、医療行政に貢献する人材を輩出する教育・研究を行う薬科学科と、薬学がカバーすべき広範な基礎科学の教育に加え、病院や薬局での実務教育を通じて高度で実践的な医療薬学の知識と技術を身に付けた薬剤師資格を有する医療従事者、研究者を輩出する教育・研究を行う薬学科です。

薬科学科と薬学科ともに広い意味で医療に関わる人材や研究者を輩出するという目的においては同じで、薬学科は病院実習や薬局実習などの医療現場での実習を行うため六年間の学部教育になっている点が異なります。この教育目的に沿って薬学部には、有機化学、天然物化学、分析化学、生化学、分子生物学、生物物理学、薬理学、薬物動態学、を中心とした講義が配置され、さらに医薬品の使用に関わる医薬品評価、医薬政策、育薬の講義を受けます。薬学部は化学(有機化学)と生物学の両方を深く学ぶ唯一の学部と言って過言ではありません。

薬学部における研究はどの分野においても基礎研究を重視しつつも、「医薬品」や「人間の健康」という社会に貢献する高い目標を視野に入れています。
それでは、本薬学部は医薬品を創造する人材を本当に輩出してきたのでしょうか。

塚崎朝子氏の手による「新薬に挑んだ日本人科学者たち─世界の患者を救った創薬の物語」(ブルーバックス、講談社、二〇一三年)を是非読んでみてください。この本の中に、日本だけではなく世界中の患者を救った医薬品を作り出した科学者が紹介されています。この中に少なくとも二名の本薬学部の出身者が紹介されており、また本書には漏れていますが世界的な医薬品を作り出した薬学部出身者が他にもおいでです。また本書に書かれた医薬品の創製に関わった本薬学部出身者が多数います。これは誇るべきことです。

薬学部では伝統的に実験が重視され、学部三年生全員が有機化学、天然物化学、物理化学、生化学、薬理学、薬物動態等の実習を一年間毎日午後に行います。全学部の中でもハードといわれる本学部の教育課程ですが、講義だけではなく実習においても化学と生物学の実験を同時に実感できる事は将来に渡る大きな価値ある経験になるはずです。学生は四年次に研究室に配属され、薬科学科では一年間教員の直接の指導のもとに卒業研究を行い研究の何たるかを体得します。薬学科の学生も病院実習や薬局実習に関わる期間を除いて研究に従事します。薬科学科のほとんどの学生が大学院修士課程に進学し、研究に励み、さらに大学院博士課程への進学、博士の学位の取得が奨励されています。また薬学科では六年間の学部卒業後四年間の大学院博士課程への進学が可能で薬剤師資格を持ったプロフェショナルになる道が開かれています。

学部生の人数の割に大学院生や留学生が多いのも薬学部の特徴の一つで、そのため薬学部は二学科=一学部という小さな学部にもかかわらず、活気ある、学生中心の、外に開かれた雰囲気を持っています。薬学部の雰囲気を一層感じたいと思う方は、薬学部が現在開講している二つの総合科目の講義や薬学部説明会・薬学部見学会に参加するか、ホームページをご覧になるとよいと思います。

(教授/薬科学)
 

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