HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報593号(2017年6月 1日)

教養学部報

第593号 外部公開

東京大学スポーツ先端科学研究拠点ジム(QOMジム)の開設

受田宏之

593-1-1.jpg東京大学は、スポーツ・健康科学の分野においても学術成果を蓄積してきた。それらは、本学の学生が運動能力を高めたり、オリンピックで活躍するようなトップアスリートが競技力を向上させたり、あるいは高齢者や障害者の身体機能の改善、選択肢の拡大を目指すものである。二〇一六年五月には、十五の研究科と研究所の参加する「東京大学スポーツ先端科学研究拠点」が設立された。運営の中心となっているのは総合文化研究科であり、今後、駒場キャンパスの教員と学生が一体となって、スポーツ・健康科学の先進的な知見を社会に発信していくことが期待される。

そうした試みの一つとして、「東京大学スポーツ先端科学研究拠点ジム(QOMジム)」がキャンパス裏門そばの全学共同利用施設(かつての身体運動科学研究棟)の一階に設立された。本ジムは動作の質(Quality of Motion)を高めることを主眼としており、十八台の認知動作型のトレーニングマシンが備えられている。開業日の二〇一七年三月一日には記者発表の場が設けられ、小川桂一郎・前総合文化研究科長と境田正樹・東大理事の挨拶の後、石井直方・スポーツ先端科学研究拠点長がジムの詳細を説明された。会見の場でも活発な質疑応答がなされたが、出席した記者がQOMジムの意義を理解したのは、ジムに移動し、それぞれがユニークな各トレーニングマシンの説明を受け、実演を間近でみることによってであった。

桜の花が僅かに残る四月二十日、ジムを再訪した。マシンの開発者であり、月曜日と木曜日に直接指導に来られている小林寛道・東大名誉教授にお話をうかがうことができた。四月二十日時点で、学内学生五十三人、教職員十一人、学外学生六人、東大駒場友の会の会員十人、一般八人の計八十八人がジムの会員になっているとのことだった。インナーマッスルを鍛えるあるいは動きのバランスが改善されること等を通じて、スポーツの競技力を高めることができ、訪問時にも、陸上部やラグビー部などの体育会の学生が、小林先生と経験豊富な一流トレーナーの指導の下、汗を流していた。小林先生は、体調の維持、姿勢とプロポーションの改善、疲労回復に役立つので、運動が嫌いな人や不得意な人にも来てもらいたいという。本ジムでのトレーニングは、高齢者のリハビリにも、さらには音域が広がるため声楽家にも有効だという。
連日パソコンに向き合い、体を動かすのは通勤時の歩行のみという典型的な中年教員である私も、いくつかのマシンを試してみた。自分のような人間にまさに足りないところを補うマシンであるため、負荷を軽くしても、求められる動作に従うのはきつかった。たとえば、〈アニマルウォークマシン〉というマシンは、四足動物の歩行様式のように手と脚を連動させるものである。〈膝腰スウィング体深筋トレーニングマシン〉では、両手で支柱をつかみ、片足立ちの姿勢で膝腰を同時に大きく前後に振る。難しさが伝わってくるのではないだろうか。体全体を総合的に鍛えることから、わずかな時間ではあったが、心地よい疲労と確かな達成感を得ることができた。すべてのマシンを使いこなせるようになれば、心身ともに相当若返るはずである。

競技での成績を良くするため、あるいはなまった体を鍛えるためといった明確な目標がなくても、QOMジムを訪れることを勧めたい。スポーツと健康科学の貴重な成果を実感できるはずである。ジムの利用料金や時間など詳細についてはHP(http://utssi.c.u-tokyo.ac.jp/exercise.html)を参照して欲しい。

(学部長補佐/国際社会科学/スペイン語)

 

 QOMジム利用案内

  開館
  月~金 9:00~14:00、16:00~21:00
  土日祝 9:00~13:00、14:00~18:00
  利用料金(税込)
  ①一般学外利用者券:1回券2,700円、4回券10,000円
  ②一般割引利用券:1回券2,200円、4回券8,000円    (東大駒場友の会会員割引)
  ③東京大学教職員券:1回券1,300円、4回券5,000円
  ④東京大学学生:1回券300円、11回券3,000円
  ⑤学外学生:1回券500円、11回券5,000円
  (1回の利用時間は1時間、利用券の有効期間2か月)

 

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