HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報593号(2017年6月 1日)

教養学部報

第593号 外部公開

Global Faculty Development ワークショップ・シンポジウム

矢口祐人

二〇一七年二月十一日から十二日にかけて、Global Faculty Development(GFD)では、外国語で行われる大学教育の今後を考えるためのふたつのイベントを開催した。

まず二月十一日には日本国内でPEAKと同様の英語プログラムを持つ北海道大、同志社大、筑波大、東北大などの大学関係者を招き、日本において外国語(今回は主に英語)で授業を提供することに伴う意義と課題について話し合うワークショップを行った。東京大学からはPEAK関係者のみならず、グローバルコミュニケーション研究センター(主にALESS/ALESA/TLP)やグローバルリーダーシッププログラムの教員なども参加した。

ウッドワード・ジョナサン准教授(広域科学専攻・PEAK)の司会のもと、異なる大学の参加者が集まって小グループを作り、特定のテーマについてディスカッションをした。たとえば「多様な出自と知識の学生がいる環境で、どのような授業を行うか」、「留学生や外国人教員をゲットー化せずに、組織に受け入れて行く方法」など、英語学位プログラムのある大学では、多かれ少なかれ抱えている問題を率直に話し合う会となった。

教員たちはテーブルを囲み、大きな模造紙に意見を書き出し、大学間に共通する問題意識や、それぞれに固有な事情を話し合った。あるグループは、留学生のニーズに合う授業をいかに行うかについて活発な議論をした。学生の出身国が比較的限られている場合は、学力や知識はある程度共通している。しかし学生が多様な国から来ていれば、それぞれが受けてきた教育も異なるから、必要とする知識も違う。多様化する学生にふさわしいカリキュラムと授業のあり方についてさまざまな意見が出された。
グループでの話し合いを終えた後には、成果発表に移り、全体で密度の濃いディスカッションが行われた。
翌十二日にはシンポジウムRethinking the lecture: Examples of flipped classrooms at MIT and UTokyoを開催し、ネット教材などを利用した「反転授業」(flipped classrooms)の意義について考えた。MIT教授で本学の大学総合教育研究センター特任教授でもある宮川繁博士による基調講演では、同教授が日本史家のジョン・ダワー教授らとMITで開発したペリー来航にまつわる日本史のオンライン授業を使った反転授業が紹介された。東京大学でもこの授業は開講されており、日米関係史をインタラクティブに、そしてグローバルな視点から学ぶ画期的な試みとなっている。

その後、総合文化研究科のカズノブ・ダビッド特任講師(ALESS)、ウッドワード准教授、吉田塁特任助教(教養教育高度化機構・KALS)らがそれぞれの実践をふまえて発表をした。最後に小原優貴特任准教授(教養教育高度化機構・KALS)が実際の反転授業を体験した二名の学生とともに、学ぶ側の声を紹介した。反転授業のおもしろさとその効果を実際に体験した学生の声は、教員たちにはとりわけ刺激的であった。

GFDは駒場キャンパスをはじめとする、東大で日本語以外の言語で開講される授業をより効果的に提供するためのプロジェクトだ。そのためには同様のカリキュラムを提供する諸大学との意見交換や合同授業、英語等のオンラインリソースを使った反転授業など、従来の授業の枠組みを超えた試みが有益であるということが、あらためて強く認識された二日間であった。

(国際交流センター/英語)

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