HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報593号(2017年6月 1日)

教養学部報

第593号 外部公開

<TLP四カ国語 研修報>TLPドイツ語 夏季・冬季海外研修(ドイツ・ボン)

平松英人

二〇一六年度にスタートしたTLPドイツ語では、幸いにして初年度の内にドイツにおける海外研修を夏と冬の計二回実施することができました。教養学部前期課程主題科目「国際研修」として実施された夏季研修には十四名、東京大学グローバルリーダー育成プログラムからの助成を受けて実施された冬季研修には十二名の参加を得、初年度はTLPドイツ語履修者のほぼ全員に参加の機会が与えられました。TLPドイツ語では通常の初修ドイツ語クラスに加え、TLP用の演習とインテンシヴ計三コマの総合科目で体系的かつ多様なドイツ語を学習する機会が提供されています。とりわけドイツ語母語話者の教員による実践的なドイツ語授業により、聞く、話す、読む、書くというすべての技能的側面で学生のドイツ語運用能力を高める効果が期待されています。さらに現地での語学研修による「ドイツで学ぶ」経験が、「ドイツ語を学ぶ」から「ドイツ語で学ぶ」へのハードルを越えていく上で、学生たちの今後の学習において力強い後押しとなることでしょう。

研修開催地であるボンは、首都がベルリンに移転するまでの間、西ドイツの暫定首都であったことから、現在でも政府機関等の公的機関が少なからず存在し、博物館・美術館等の文化施設も充実しています。ドイチェ・ポストやドイチェ・テレコムといったドイツを代表する国際的企業の本社や国連大学の事務局もあり、非常に国際色豊かな都市でもあります。TLPドイツ研修ではその地の利を活かし、ドイツ語の集中的な訓練以外にも多彩な研修プログラムを組むことができました。東京大学と全学協定を結んでいるボン大学教員による講演会やワークショップ、現地の学生たちとの交流会、博物館・美術館でのガイドツアーはすべて英語で実施されました。中でも“East meets West”と題した現地の学生たちとの異文化交流ワークショップとドイツ国際放送局の訪問は、学生たちにとって今回の研修のハイライトになったようです。ドイツ滞在中、学生たちは英語を使用する機会も多く、その点でもトライリンガル・プログラムの名にふさわしい研修となりました。

TLPドイツ研修の企画・運営には私の所属するドイツ・ヨーロッパ研究センターが協力したこともあり、センター助教として二度の研修旅行の引率を担当しました。参加学生にとっては初めてのドイツ訪問であり、なかには初めての海外経験となる者もいました。そんな学生たちにはこの研修での経験や学びを通じて、今まで慣れ親しんできた心地よい世界を相対化し、多種多様な価値観が共存・対立する「外部」へと視野を広げ、グローバル人材としての基礎体力と思考力を身につける第一歩としてほしい。そのためのプログラム作りは、暗中模索、試行錯誤の連続でした。さらにドイツからは研修の実施が危ぶまれるようなニュースまで飛び込んできましたが、参加者の安全確保に細心の注意を払いつつ、無事研修旅行を実施することができました。幸いにして夏冬ともに天候にも恵まれ、学生たちには明るく開放的なドイツの一面も強く印象に残ったようです。私にとっては、二週間の研修期間を通してほぼ休む間もなくプログラムが組まれていた中で、大いに学び、大いに遊び、そして大いに食べては屈託なく笑う、タフで個性豊かな若者たちの姿が非常に印象的でした。最初はどことなく頼りない様子だった学生たちが、若者らしい感性と行動力で、日本とは異なる多様な生活様式や価値観を真っ正面から受け止め、短期間に多くのものを吸収し成長する姿を間近に目にすることができたのは、引率者冥利に尽きる経験となりました。最後に二度にわたるドイツ研修の実現にご支援、ご尽力頂いたドイツ学術交流会、ボン大学、東京大学の関係者各位に厚くお礼申し上げます。二〇一七年度もドイツ研修が予定されています。クリアすべき問題は少なくありませんが、過去二回の経験と反省を踏まえ、より充実した研修にしてきたいものです。

(グローバル地域研究機構)

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