HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報599号(2018年4月 2日)

教養学部報

第599号 外部公開

<施設・組織紹介>アメリカ太平洋地域 研究センター(CPAS)

西崎文子・遠藤泰生

http://www.cpas.c.u-tokyo.ac.jp/

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。駒場キャンパスの研究教育施設を活用し、柔軟な視点から、さまざまな問題を深く考える経験を積んでもらいたいと願っています。それを支援する組織の一つとして、アメリカ太平洋地域研究センター(CPAS)を紹介します。駒場キャンパスの中央を走る銀杏並木の西端近く、十四号館に接続する二階建ての建物にそのセンターはあります。

このセンターは、北米とオセアニア地域に焦点をあてながら、アメリカ太平洋地域の歴史、政治、経済、文化、社会を研究する専門組織です。アメリカ合衆国に関する国立大学唯一の研究機関として一九六七年に設立され、昨年創立五〇周年を迎えました。近年は合衆国の政治や文化だけでなく、中南米やアジア太平洋諸地域と合衆国との関係を強く意識しながら、アメリカと世界とを多角的に捉える研究を数多く展開しています。昨年度は「アメリカは今——歴史から政治へ」をテーマとする公開シンポジウムを企画し、海外からの研究者を交えてトランプ時代のアメリカを歴史的視点から検討しました。またオーストラリア国立大学との戦略的パートナーシッププログラムの一環として、歴史と記憶、政治哲学の方法論の再検討をテーマとした国際セミナーも開催しました。

こうしたシンポジウムに参加するのももちろん楽しいのですが、新入生のみなさんには、定期的に開催されているCPAS公開セミナーに参加し、大学における研究の最前線を味わってみることをお勧めします。このセミナーでは、国内外の一流の講師を招き、現在学術の世界で重要とされる問題を自由に討議してもらっています。米・欧・豪・亜の各地からセンターを訪れる研究者が、地域文化研究や国際関係論を志す院生や学部生を交えた聴衆と活発な議論を重ねています。昨年度は、現代オーストラリアにおける階級や社会的差異の問題を文学を通じて考えたり、ベトナム難民の本国への「帰還/送還」をめぐる個人と政治とのせめぎ合いを分析したりなど、多様なテーマが取り上げられました。英語でのセミナーがほとんどですが、臆することはありません。講師の話に耳を傾け、自分の疑問を率直に伝えていくうちに、英語での学問的やりとりは格段に容易になっていくでしょう。学部新入生のみなさんも積極的に挑戦してみてください。

アメリカ太平洋地域に関する文献を収集し、全国の研究者や学生に広く公開することも、本センターの重要な活動です。アメリカ合衆国の政治・歴史・文化に関する専門書を中心に七万冊を越える文献を有するセンター図書室は、誰でも自由に利用できます。雑誌も豊富に揃えています。みなさんも学生証さえ見せれば図書を借り出せるので、ぜひ利用してみてください。マイクロフィルム、映画・ドキュメンタリーDVDを含む視聴覚資料も充実しています。時間が空いた時にそれらの資料を眺めてみるのも楽しいでしょう。
現在センターは、南太平洋島嶼諸国やオーストラリアを含むオセアニア地域に関する図書資料を意識的に増やしています。多文化共生の実験の場とも称されるアメリカ太平洋地域の過去と現在を見すえ、未来を考える活発な研究空間へとセンターを育てていきたいと考えています。詳しくはセンターのホームページを見てください。上に紹介したセミナー、シンポジウム、図書室の利用規程の他、いろいろな情報が掲載されています。

(グローバル地域研究機構/歴史)
(グローバル地域研究機構/英語)

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