HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報599号(2018年4月 2日)

教養学部報

第599号 外部公開

オトナのコマメシ2

堀田知佐

「ローカル感」「高級感」「奥まっている」このうち一つでも当てはまれば、お店の敷居はぐっと上がる。駒場にはしかし何故かそんなお店も多い。毎年書くことになるコラムと同様、日々通うお店のリストも、新しければよいというものでもないが、いずれ代わり映えもしなくなる。そこで発掘すべきは、敷居の高いお店たちである。

みなさんは風邪をひきはじめにカレーを食べたくなることはないだろうか? どうやら弱った肝臓がウコンを欲しているらしいという、真偽が定かではない話を最近知った。駒下⑤のカレー屋Lucyの匂いは知っていても足を踏み入れたことのない人も多いかもしれない。以前はカレーなどわざわざ外で食べるほどのものではない、と嘗めてかかっていたところがあるのだが、これもまたある種の思い込みであった。ある日、思い切って階段を下りて、そこで知ったチキンカレーのさっぱり後味、これは只者ではなかった。反対にこってり系の南海のカツカレー、そのローカル感もすごい(実際には他所にも南海はある)。以前うちにいたフランスの若者は、駒場に来るたびにいつもこれを食べにゆく。駒場の裏手、地図を少し外れた建物の上の階にも、最近見つけた焼きカレーのお店がある。熱々のスキレット鍋から焼き立てのカレー汁が溢れて音を立てる、これも時折、無性に味わいたくなる逸品である。勿論、場所は内緒だ。

欧州の年上の友人は、申の刻を過ぎるとそわそわしはじめ、つぶらな瞳で甘いものがほしいと訴える。脳が糖分を欲しているというのは、もちろん我々自称頭脳労働者の言い訳に過ぎないが、それにしても彼のゆく処ゆく処、常に美味しいCake&Breadがあらわれる。駒場での開発先はLe Ressortである。Very expensive but excellent!. 小銭とにらめっこして値札を見ながら、やはり追加で頼むはピスタチオクリームサンド。キャンパス裏手のJamも最近フランス人らしきパティシエがケーキを始めたばかり。わたしも負けじと、通るたびすかさず「オペラ」を買い占め、濃厚なバタークリームの味にひととき目の前の憂鬱を忘れる。西光亭、これまた足を踏み入れるのがためらわれる店構えだ。一歩入ってびっくり仰天、リスリスリス。はて、バレンタインのお返しには、どのリスがいいだろう。

何でもネットで調べられる昨今に、やはり行って、見て、食べてみなくてはわからないのがこうしたお店のメニューの味だ。何時もの習慣を少し傍に押しやって、何時もは素通りする扉を開いてみると、そこには、何かしら新しい展開が待っている。

マップ掲載のお店に関する概要は拙筆の2017年度オトナのコマメシを参照されたい。それ以前の齋藤希史先生のコマメシのバックナンバーもある。

(相関基礎科学/物理)

オトナのコマメシ2マップ.png

*オトナのコマメシ(2017年4月第591号)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/about/booklet-gazette/bulletin/591/open/591-7-2.html

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