HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報601号(2018年6月 1日)

教養学部報

第601号 外部公開

この春も駒場は音楽に溢れている

長木誠司

3つの演奏会について

本年度から、教養教育におけるアート関係の実技授業導入の一環として、音楽の分野でも学術フロンティア授業に混声合唱の実技や、カール・ストーン氏を迎えての新しい音響表現の授業など、実践に関わる授業が始まっている。欧米の総合大学では当然のことのように行われていたこうした実技授業が、ようやく東大でも可能になりつつある。もっとも、個別の授業では、従来からこのような実技系はあったわけであるが、それをゆくゆくは全学的な規模で、研究と絡めて組織的にやり始めようというのが今年からの新たな取り組みである。

それとは別個に、大学内での催しとしては、これまでにも博物館や講堂を利用して、各種アート関係の催しが行われてきている。音楽に関しても、駒場では九〇〇番教室のパイプ・オルガンを利用してのオルガン演奏会は、すでに四十年以上の歴史があるし、またコミプラ北館二階の音楽実習室におけるピアノ演奏会、室内楽演奏会も、ともに十年以上の歴史を持っている。オルガン委員会、ピアノ委員会を中心にして行われてきたこれらの催しについては、それぞれのホームページをご覧いただきたいが(http://organ.c.u-tokyo.ac.jp/、http://piano.c.u-tokyo.ac.jp/)、名だたる演奏家をお迎えして、これまでにも充実したプログラムが組まれ、大勢の学生のみなさんが詰め寄せて好評を得てきている。

この春には、数理科学研究科を中心に、ピアノ委員会と東大駒場友の会がコラボして、五月十一日に「音楽×数学 音楽と数学の織りなす世界」という催しが学際交流ホールで行われたが、このほかにオルガン委員会、ピアノ委員会がオーガナイズする演奏会として、三つの催しが予定されている。

ひとつは、六月二日(土)に音楽実習室で予定されている「第二十三回東京大学教養学部選抜学生コンサート」。これは毎年二回、春と秋に行われている催しで、二〇〇五年に購入されたスタインウェイを学生のみなさんに弾いてもらう機会を作ろうという意図もあって開始されたシリーズである。毎回オーディションをして、演奏者(ソロからアンサンブルまで)を学生から選抜し、演奏会では次々とステージに登場してもらって、二時間ほどのプログラムを構成する。ピアノを用いることは必須ではなく、実際には歌あり、器楽アンサンブルありと、さまざまな編成の学生のみなさんがオーディションに応募してこられ、また近年とみにレヴェルが上がっているので、限られた演奏会の時間に収まるように選抜するのが年々たいへんになってきている。その分、充実した、楽しめる演奏会になっている。今春も四月二十四日に行われたオーディションでの選抜メンバーが出演するが、いやはや東大生というのは、単に「お勉強」ができる方々なのではなく、いろいろな才能を隠し持っているのだなあと、毎回感心しながら聴いている。主として、いわゆるクラシック音楽、西洋芸術音楽によるプログラムであるが、ジャズ等の音楽、あるいは日本を含む東洋の音楽でもかまわないので、腕に自信のあるひとは、ぜひともオーディションに応募してほしい。

六月七日(木)には、同じくピアノ委員会主催による、「第二十二回東京大学教養学部室内楽演奏会」が予定されている。こちらではモーツァルト作曲による三曲、《ファゴットとチェロのためのソナタK.292》《木管とピアノのための五重奏曲K.452》《ディヴェルティメントK.563》が採り上げられる。モーツァルト好きならすぐ分かるだろうが、これらは実演ではめったにお目にかかることのない作品である。今回はとくにそういう作品が選ばれており、演奏にはNHK交響楽団のメンバーが中心になって、八名が登場する。ピアノ委員会としても破格の大盤振る舞いであり、これが無料で聴かれるというのは千載一遇のチャンスと考えていただいてよいと思う。整理券は早めに採っていただくのが肝心である。

オルガン委員会の主催によって、年に三回ほど行われているオルガン演奏会は、六月二十日(水)にオルガンの井上圭子氏、ソプラノの藤田美奈子氏を迎えて、バロックから近代までの声楽・器楽を取り混ぜたプログラムを九〇〇番教室で披露していただく。パイプオルガンというのは、日本に住んでいると比較的縁遠い楽器なのであるが、いわば西洋音楽の心臓部をなすものであり、この楽器を知らないと西洋音楽は本当に分かったことにならないようなところがあるので、こうした機会に若い方にはぜひ音として触れていただきたいと思う。バッハありヘンデルあり、フォーレありプッチーニありと盛りだくさんな内容であるが、楽器が設置されている講堂二階から一階の客席へと降り注いでくるような音の響きをぜひ楽しんでいただきたい。

最後になるが、これらは毎回共催していただいている東大駒場友の会あっての演奏会シリーズでもあり、この場を借りて関係各位にはお礼申しあげたい。

(ピアノ委員会委員長/超域文化科学/ドイツ語)

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