HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報601号(2018年6月 1日)

教養学部報

第601号 外部公開

<時に沿って>12年ぶりの駒場キャンパス

山道真人

二〇一七年の九月に総合文化研究科の広域システム科学系に着任した山道です。二〇〇五年に学部三年生になる際に駒場を去って以来なので、十二年ぶりに戻ってきたことになります。二〇〇三年から二年間通っていた駒場キャンパスですが、年齢を重ねたためか、それとも研究者としていくつかの大学を渡り歩いて視点が変わったためか、さまざまな発見があり、毎日を楽しく過ごしています。

まず挙げられるのは、昼食の選択肢の豊富さです。大学院では神奈川県葉山町にある総合研究大学院大学、ポスドクでは米国ニューヨーク州イサカのコーネル大学、前職では滋賀県大津市の京都大学生態学研究センターに所属していました。これらのキャンパスは自然豊かな美しいところなのですが、どちらかと言うと昼食の選択肢は限られていました。駒場キャンパスでは、生協食堂と周辺の店舗のみならず、少し足を伸ばせば二駅先に渋谷駅と下北沢駅があり、選びきれないほどの候補があります。

そのような都会であるにも関わらず、大学周辺に緑地が多い点にも、あらためて驚かされます。駒場東大前駅から坂下門を通ってキャンパスに入ると、右手には木々が茂り、左手には水が湧いて小川となって流れています。この原稿を書いている季節(四月中旬)にはクレソンの白い花が咲き、たまにアメリカザリガニやウシガエルを見ることもあります。どうやら、キャンパスの反対側の一二郎池の湧き水と合流し、空川に注いでいるようです。一二郎池と言えば、私が学部生の時にはみだりに近づけない雰囲気がありましたが、現在では歩道が整備されて、池に集まるカワセミやカルガモ、オナガなどの鳥たちを観察しやすくなりました。さらに、二月の梅林門付近では梅の木を訪れるメジロやジョウビタキが見られます。また、第一グラウンド脇の小道では、南向きで日当たりが良いためか、一月から早咲きのタンポポを見ることができました。

キャンパスを出て線路を越えると、駒場野公園があります。こちらも学部時代にはほとんど訪れなかったのですが、駒場農学校の雰囲気を感じられるケルネル田圃のみならず、自然観察舎の生き物の展示も見所です。見所と言えば、駒場公園の旧前田邸と日本近代文学館、駒場Ⅱキャンパスの左右非対称な時計台をはじめとする建築物、それらにはさまれた日本民藝館も忘れるわけにはいきません。さらに、原宿方面に目を向ければ、代々木公園・明治神宮にも歩いて行ける距離です。

私が専門としている数理生態学・進化生物学という分野では、生物がどのように多様化し、共存しているのか(あるいはどのように絶滅するのか)という問いに答えるべく、数理モデルや統計モデル、コンピュータシミュレーションをもちいて研究を進めます。そのため、ついつい室内にこもりがちになるのですが、まずはキャンパスを中心とした身の回りの生物多様性を感じながら、実験やフィールドの研究者と連携しつつ、駒場での研究と教育を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

(広域システム科学/生物)

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