HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報603号(2018年10月 1日)

教養学部報

第603号 外部公開

<時に沿って>駒場での 十年間

前田海成

二〇一八年四月一日付けで総合文化研究科広域科学専攻の助教に着任しました、前田海成と申します。私は二〇〇九年に理科Ⅱ類に入学してから昨年度博士号を取得するまで駒場で学生生活を送り(生命・認知科学科→総合文化研究科)現在に至るので、駒場キャンパス十年目となります。そして任期は一年間であるため、今年度が駒場最後の一年となります。ですので、自己紹介を兼ねて駒場での十年間を振り返りたいと思います。

私が入学した頃はまだキャンパス内に猫が多く、駒下にはもっくもっくや肉の手作り弁当がありました。前期課程は大学生らしい思い出に溢れていますが、同時に研究者としての今の私に繋がる最初の一ページでもありました。というのも、様々な講義を受ける中で生命科学の道に進みたいと考えるようになり、そして、二年夏学期に受講した基礎生命科学実験をきっかけとして生命・認知科学科の存在を知り進学を決めたからです。今年の夏学期には、自分が教員としてその縁ある講義を担当することとなり、非常に感慨深いものがありました。

後期課程からは研究が始まり、駒場キャンパス内で過ごす時間が多くなりました。また、前期課程以上に駒場周辺や渋谷、下北沢に足を運ぶ機会も増え、様々な飲食店を開拓しました。駒場キャンパス付近の飲食店の数や種類は本郷キャンパスと比べると少ないですが、少し足を伸ばせば美味しい店が数多く発見できます。新しく駒場キャンパスにいらした学生さんや先生方は、ぜひ散策してみてください。学生向けの価格設定ではないのがネックではありますが、駒場キャンパスの魅力の一つであると考えています。

生活が研究中心になった修士課程以降は、研究室が家のようになりました。師事している池内昌彦教授をはじめとした駒場の先生方の指導により、研究者として成長させていただきました。私は、生物の特徴的な生き様の分子メカニズムを解明すること、それを応用に結びつけることを目指しており、これまでシアノバクテリアの細胞外多糖合成系を研究してきました。細胞外多糖は増粘剤や食品、バイオマテリアルとして活用され医薬品としても注目されていますが、細胞凝集や固着といったシアノバクテリアの生態にも大きく関与しています。私の研究により、シアノバクテリアに特異的な多糖合成系の存在が明らかになりつつあります。

このように、私の研究者としての原点は、この駒場キャンパスにあります。そして、駒場での経験と思い出を胸に、今年度いっぱいで巣立つこととなります(来年度の身の振り方は何も決まっていませんが)。一年間の助教生活で得たものを駒場で活かせないのは残念ではありますが、いずれまたこの地を踏む日を夢見ております。

別れの挨拶のようになってしまいましたが、あと半年の間は引き続き駒場キャンパスでお世話になりますので、皆様どうぞよろしくお願い致します。

(生命環境科学/生物)

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