HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報605号(2018年12月 3日)

教養学部報

第605号 外部公開

<時に沿って>悩み多き学生時代

三竹大寿

平成三十年四月一日付けで、数理科学研究科に着任しました。平成二十一年三月に早稲田大学で学位をとってから、フランス、アメリカでポストドクター時を過ごし、福岡大学、広島大学で勤務を経て、現在に至ります。
さて、「時に沿って」ということですので、自分の学部、大学院生時代のことを思い返してみました。普段(自分の)授業で(新入生の一番初めの授業だけですが)、「大学生の特権は自由であり、それを謳歌して下さい。一方で、自由とは、責任が伴うもので、誰も何も言わない分、自分で自分のことを律しないといけないですね。」と(偉そうなことを)言っています。自分が学生の時はどうだったのでしょう? テニスサークルに入ったものの、その勢いについていけず一年間でやめた記憶が残っています。また、自分の進路についても良く悩み、色々と効率よくない勉強をしていたと思います。そんな大学の学部生活を送ったのも十五年以上前になるので、時の流れが早く感じずにはいられません。いつまでも自分は若いと思いたいですが、そうでもない年だなと良く気づかされます。
修士課程に上がるときには、まだ研究者を目指したいという決心はできていませんでした。現在もそうですが、研究者として生き残るのはものすごい大変ということは分かっていたので、本当にそういった人生のリスクをかけてまでやりたいことなのかと自問自答していました。正直、修士課程として在学しているときに、その答えは出なかったのですが、博士課程へ進むことは決めました。博士課程在学中には、まずは集中して勉強、研究をして、結果やその後の進路は後から付いてくるだろうといった心境に至りました。ですので、この時には、ものすごく悩んだりすることは少なくなりました。博士課程を卒業後には、海外でポストドクターとして、約二年半くらい過ごしました。滞在中に多くの研究者や学生に会うことができ、有意義に過ごせたと思います。ここで得た経験と自信は大きく、この頃にやっと研究者として生き残りたいといった決心ができました。親戚や友人に「小さい頃から数学者になりたかったの?」と聞かれることがあります。答えはいつも、「とんでもない、最近です」と答えています。しかし、今では、研究者として数学を研究、勉強できることに感謝と喜びを感じています。
私の学生時代みたいに、進路について悩んでいる人がいるのでないでしょうか?将来、したいことが見つからない、なりたいものがあるけれどなれるか不安と感じている人もいるかもしれません。そういった人には、物凄くありきたりではありますが、「まず目の前にあることを真剣に取り組みましょう」とアドバイスしたいと思います。その積み重ねによってでしか、見えない景色というものがある気がします。学生時代に悩むのは当然です。おそらく、悩まない人の方が少ないはずです。ですので、悩み多きこの時期を貴重に過ごしてください。

(数理科学研究科)

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