HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報605号(2018年12月 3日)

教養学部報

第605号 外部公開

<時に沿って>工学部、理学部、そして教養学部

横川大輔

今年の九月に総合文化研究科広域科学専攻に着任しました。専門は物理化学、量子化学です。一応、化学を研究していることになっていますが、ドラフト中で実験するのではなく、計算機の中でプログラムを駆使した研究をしています。
さて、いきなりですが、皆さんは教養学部(総合文化研究科)内で行われている研究に対して、どういったイメージをもっているでしょうか?教養学部は基礎を教えるところだから、基礎研究ばかりしているイメージをお持ちでしょうか。恥ずかしながら私も着任するまでは、少なからずそういったイメージを持っていました。しかし、着任していろいろな先生にお会いして感じたのは、「今までの環境とほとんどかわらない」ということです。
私は京都大学大学院工学研究科で学位を取得した後、大阪大学蛋白質研究所で博士研究員、名古屋大学理学研究科で助教、特任准教授として研究を続けて来ました。世間一般には、工学=応用研究、理学=基礎研究と思われるかもしれません。しかし、実際に工学部、理学部を渡り歩いてみると、少なくとも私はそのような違いを感じることはありませんでした。工学部でも基礎的な研究をされている方もいれば、理学部で応用的な研究をされている方も多くいらっしゃいました。そして、この総合文化研究科にいらっしゃる先生の研究内容を見ましても、基礎研究から応用研究まで非常に幅広い領域がカバーされています。前述の「教養学部は基礎研究」というイメージは間違っていたと今では反省しています。
このように、工学部から理学部、そして教養学部と渡り歩いてきて、最近思うことがあります。それは、「そもそも基礎と応用という区別自身がおかしいのでは」ということです。どの研究分野にも基礎的な側面、応用的な側面があります。応用研究を進めるためには、土台となる基礎研究がなくてはなりません。また基礎研究といっても、教科書に載っていることを繰り返しているわけでは決してなく、自然現象の理解に必須の基礎的な知見の習得を目指しているのであり、そのためには応用的なアプローチも必要となって来ます。ですから、基礎、応用と区別して考えるとその研究が持つ本質(面白さ)を見失う可能性があると思うようになりました。
この学部報を読んでいるかたの中には、進学選択前の学生さんや大学院進学を考えている学生さんがいると思います。「私は応用がしたいから〇〇学科に行きたい」といった決め方をする方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。東京大学には面白い研究をされている先生が沢山いるのに、そのような古い概念にとらわれすぎるともったいない気がします。それよりも、自分がしたいことを中心に探してみてはいかがでしょうか。ちなみに、私が所属することになった総合文化研究科も、非常に面白い研究をされている方ばかりです。進路選択の際には是非候補に入れてみて下さい。

(相関基礎科学/化学)

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