HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報606号(2019年1月 8日)

教養学部報

第606号 外部公開

送る言葉「多才でタフな嶋田さんを送るにあたって」

吉田丈人

嶋田さん(と、いつものように呼ばせていただきます)、長きに渡る駒場でのお勤め、大変お疲れさまでした。ご退職、おめでとうございます。僕が駒場で一番お世話になってきた先生が退職されるにあたって、今までの時間を思い出し深い感謝の気持ちが溢れてくるとともに、惜別と焦燥の混じった何とも表現しがたい感情を覚えます。思い起こせば、僕が駒場に着任してから十二年余の時間が過ぎました。この間、嶋田研・吉田研合同の研究室セミナー、部会・学科・系の教員グループ、新しく始まった国際環境学の教育など、駒場らしい多種多様な場所と機会で、嶋田さんと共に同じ時間を過ごせたことは、僕の大学人生においてとても幸せな経験となりました。研究室セミナーでは、生き字引のような豊富な知識と経験を、時に嶋田さん自身の懐かしい昔話を交えながら、無邪気とさえ言えそうな語り口で教えてくれましたし、懇親会などでは、いつも有難い講話をしてくれました(僕はお酒を前にしてこういう話は苦手で随分助けられました)。運営業務では、嶋田さんが副研究科長になられた時に学部長室主導で始められた、PEAK・GPEAKの国際環境学コース・国際環境学プログラムがあります。嶋田さんが中心的な役割を果たして育ててきた教育プログラムであり、学部長室を離れた後も強い責任感のもとに取組まれて続けてきたからこそ、現在の国際環境学教育があると感じています。
嶋田さんの数々の研究業績をここでは紹介できませんが、生態学などへの学術的な貢献のみならず、研究の過程で多くの優秀な研究者を育てられたことや、いくつかの重要な教科書を出版されたことに、大きな敬意を表したく思います。また、科研費申請で一度も欠かさず採択され続けてきたことも、なかなか実現できることではないでしょう。僕自身も、駒場に着任して最初の大事な科研費申請では有益なアドバイスをいくつも頂きました。おかげさまで、最初はゴミの山から始まった研究室を、なんとか無事に立ち上げることができました。嶋田さんと十二年間も近くにいながら、実は共著論文は一つもありません。なぜかと言われると不思議ではありますが、お互いの研究室の学生にさまざまな形で関わり合えたことは、単なる共同研究の関係を超える深い協働関係があったと言えると思います。退職される直前に、研究フィールドの福井県三方五湖に来ていただく機会をいただけたことは、良い思い出となりました。

(広域システム科学/生物)

第606号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報