HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報608号(2019年4月 1日)

教養学部報

第608号 外部公開

辞典案内 2019 国語辞典

矢田 勉

出版不況、殊に辞典が売れないと言われて久しい一方で、静かな国語辞典ブームという相反した状況が続いている。そのブームの功績は、辞書には個性があることを世に周知したことである。確かに、市販されている国語辞書に、全く役に立たないようなものはない代わりに、絶対的というものもないのであって、常に複数のものを座右に備えて引き比べたうえで、自分なりに情報を吟味して使用することが望ましい。

個人で持つ小型・中型の辞書とは別に、大学生としては是非とも使いこなしたいのが、最大の国語辞書、『日本国語大辞典(第二版)』(小学館、全13巻+別巻1、揃210000円)である。駒場図書館はもちろん、多くの図書館・室に備えてあるし、オンライン版が、学内ネットワークに接続しているPCから利用できる(GACoS→定番データベース/JapanKnowledge Lib→基本検索。情報基盤センター教育用計算機システム(ECCS)のアカウントで、学外からの利用も可能)。また、3巻に縮約した「精選版」(揃45000円)もあり、こちらには電子辞書版やiOS用アプリ版(税込7800円)などもある。

日本古典を読もうとすれば、古語辞典が必要となる。大学での学びでは、やはり高校生向けの学習古語辞典では十分でない。『日本国語大辞典』は古語辞典の役割を兼ねる。専門的な古語専門辞典には、中型では『小学館古語大辞典』、大型では『角川古語大辞典』があるが、現在どちらも新刊では手に入らない。より専門的には、『時代別国語大辞典 上代編』(三省堂、40000円)、『時代別国語大辞典 室町時代編』(三省堂、全4巻、揃213000円)もある。全4巻のうちまだ2巻までが刊行されたところであるが、『古語大鑑』(東京大学出版会、各38000、42000円)は、古典テキストに使用された漢語や漢文訓読語なども充実した、特色ある辞典である。

また、本格的に古典研究を行おうとすれば、それぞれのテキストが書かれた時代に編まれた辞書を使う必要がある。江戸時代以前に作られた辞書を「古辞書」というが、ここで細かく説明する余裕はない。授業等を通じて触れて欲しい。

(言語情報科学/国文・漢文学)

※辞書の価格について、特に注意書きのないものは税抜きとなります。

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