HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報609号(2019年5月 8日)

教養学部報

第609号 外部公開

<後期課程案内> 教養学部 教養学科

学科長 森元庸介

開かれた(少し秘密の)園

教養学科は、いまみなさんが学んでいる教養学部の後期課程、その文系部門です。一九五一年の設立以来、長きにわたって学際性と専門性を両立させる高度な教養教育を実践し、多くの優れた卒業生を送り出してきました。
カリキュラムの特徴を思いきり絞りこんで挙げるなら、①少人数教育、②サブメジャー・プログラム、③高度な外国語教育の三つとなります。①については、二年生のみなさんも2Aから授業に参加できるのですが、2Sまでと趣のかなり異なる少人数方式、かつ、ときとして高度に専門的であることも辞さない雰囲気に最初はちょっと腰が引けるかもしれません。でも心配は無用、一月も経てばすぐに馴染んで、誰もが気兼ねなく声を発することのできる風通しのよい学問環境がなんだか心地よい─そうなってしまったら、もう後戻りはできないはずです。前期課程の授業では少し見えにくいかもしれない教員の意外な「素顔」に触れる楽しみのあることも強調しておきましょう。
②にいうサブメジャー・プログラムとは、所属以外のコースが提供する一五単位ほどの科目群をいわば副専攻として集中的に履修するプログラムのことで、修了生には、卒業時、卒業証書とともにプログラム修了証が授与されます。③について、教養学科では多くの場合に二外国語の必修が課され、前期課程で外国語を担当する教員の多数が所属することもあって、メニューはたいへん豊富です。日本語・英語に加え、もう一言語のハイレベルな習得をめざす後期トライリンガル・プログラム(TLP)も拡充中。
学科の内実を具体的に見てみましょう。柱となるのは「超域文化科学分科」、「地域文化研究分科」、「総合社会科学分科」という三つの分科ですが、加えて、英語で授業をおこなう「国際日本研究コース」も設置されています。
超域文化科学分科は「文化人類学」、「表象文化論」、「比較文学比較芸術」、「現代思想」、「学際日本文化論」、「学際言語科学」、「言語態・テクスト文化論」の七コースから成ります。学問領域や地理的境界、文化ジャンルを横断する学際性と総合性を特徴とします。扱う対象は伝統儀礼や民族芸能から社会の高度情報化にともなって変容をつづける芸術や文学、しかしまたその根底となる言語活動や思想営為に至るまで実に多彩ですが、いずれにしても、対象に密着しつつ汎く文化の行方を見据える複合的な視点を養います。
地域文化研究分科には「イギリス研究」、「フランス研究」、「ドイツ研究」、「ロシア東欧研究」、「イタリア地中海研究」、「北アメリカ研究」、「ラテンアメリカ研究」、「アジア・日本研究」、「韓国朝鮮研究」の九コースが設置され、人文/社会科学の手法を総動員して特定の地域を多角的に学びます。また学問の性質から当然のことですが、専門的な外国語運用能力の習得をとりわけ重んじ、多くのコースで卒論を外国語で書くことが要求されています。チャレンジングではありますが、高い山を昇った先に拡がる眺めは格別のはず。
総合社会科学分科を構成するのは「相関社会科学」と「国際関係論」の二コース。前者は社会科学の諸分野(法学、政治学、経済学、統計学、社会学)を統合しつつ多様な社会現象を総体的に理解することを、後者は国家、またその他のアクターの複雑な相互関係を視野に入れ、グローバリゼーションの進む現代世界を複合的に研究することをそれぞれの目標とします。コース間でカリキュラム(必修科目の設定)こそ異なるものの、学問上のセクショナリズムを超えたディシプリン横断的なアプローチは変わりません。
国際日本研究コースは、やはり人文/社会科学のさまざまな知見とその適用方法を習得し、日本と東アジアの文化・社会を国際的・学際的な視点から学ぶ英語のコース。多くの留学生とともに学びながら、既成の理解を引っくり返す真の発見をめざします。
以上です─でもよいのですが、役目上しかたないといえ、ちょっと堅苦しくなりました。最後に少し「私語」を。
教養学科というものがあるというのは耳にしているけど、でも実際どこにどんなふうにあって何をやっているのかちょっとはっきりしない、これが多くのみなさんの思いではないでしょうか。本音をいえば、この少し謎めいた感じを、わたくし自身は嫌いでありません。主に二号館、八号館、十四号館の小ぶりの教室で多様な背景・関心を持つひとたちが席を同じくし、決して声高でないけど熱のこもった言葉が自由に行き交う、そうした内閉と開放の共存こそが教養学科の核心的な魅力とさえ思います。といって周知の努力を怠るのではむろんなく、各コースによるガイダンスがちょうどいま、集中的に開催されていますので、気軽に足を運び、できればその先、研究室の扉をぜひ臆せず叩いてみてください。魅惑の園はみなさんの訪れにいつでも開かれているのですから。

(教養学科長/ 超域文化科学/フランス語・イタリア語)

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