HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報609号(2019年5月 8日)

教養学部報

第609号 外部公開

<後期課程案内> 教育学部

教育学研究科長・教育学部長 秋田喜代美

探究し未来社会を創る人を育む「教育」
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/

未来社会の基盤を創る教育
本郷キャンパス赤門を入って向かって、左手の建物が、教育学部棟です。教育学部と聴くと、学校の先生になることを志す人が進学する学部と言うイメージを持つ人がおられるかもしれません。しかし、本学教育学部は、将来教師になる人を育てる教員養成を主眼とする教員養成大学の教育学部とは、カリキュラムもコース組織も全く違っています。東京大学教育学部の学部卒業生約三千名の中には、教師になる人もおられますがそれよりも、多様な企業や官公庁、専門職に就いて活躍されています。それは、いわゆる学校教育だけではなく、生涯にわたり人の交わる場には必ず、教え学び、育ち育てられるという教育の営みがあり、多様な場で求められ役立つ知を創り供する場となっているからということができます。そして探究する学びのあり方を問う学部ということもできます。
教育は、社会を創る人材育成の要です。グローバル化が進みこれからの社会を担う人材の資質能力育成は、どの国でも中心となるトピックです。人工知能が進み、AIに多くのことが取って変わられるようになっても、問いを持ち創造的に新たな価値や事物を生み出すのは、教育の営みです。その営みのプロセスやメカニズム、人が生涯にわたって乳幼児期から高齢者になるまで、文化や社会の中で人が育ち学ぶ脳や心身発達のメカニズムやその発達を支える制度や環境などの支援を、幅広く多様な学術分野から問う学術研究やその教育を行っているのが、教育学部です。長期的な視点を持って社会を捉えると同時に現在直面する課題を見つめ、解決を図る手応えや社会的使命を持った学問を行う学部です。
被教育経験を振り返り、可能性を探る
教育学部は、今年七〇周年を迎えます。東大の一四〇年を越える歴史の中で、戦後新たな精神で創られた学部です。日本の教育の向う方向性を示し、実践や政策に対しても、戦後からの復興の中で民主主義にもとづく公教育をリードする役割を担ってきています。学生の皆さんは、大学に入るまでに一万二千時間あまりの授業時間を小学校から高校までの学校において受けてきています。その被教育経験を多様なアプローチを通して振り返ると同時に、様々なフィールドワークや調査研究、実験などを通して、自分の持っていた教育に対する考え方を更新する場でもあります。また脳科学等からの人の育ちを捉える研究室もあります。考えると同時に行動し創りだすことを大事にしている学部教育を行っています。学部生全員が必修で卒業論文を書くことになっていますので、その中で教育に関しての問い方を学び、自らの問いを探究するという学びの機会を得られるようになっています。教育学部は、教員約四十名と小さな学部であるので、アットホームな関係の中で、それぞれの学生の皆さんが演習等でも積極的に関与する機会に恵まれています。また女性教員の数も女子学生の比率も学部・大学院共に最も高い学部です。少数の多様な声を聴くこと、多様性や包摂性を重視しています。附属バリアフリー教育開発研究センターではインクルーシブな教育の研究を行い、心理教育相談室でも多様な心理的問題を抱える人に対して相談を実施し、臨床心理士等のカウンセラーの育成教育研究を行っています。
附属学校・園や附属センターとの協働
上記にも挙げましたように充実した附属施設も、教育学部の魅力です。教育学部には附属中等教育学校があります。この学校は、遺伝と環境の影響に関わる研究をいわゆる双生児研究と言われる形で長年にわたって実施してきました。また協働的で探究的な学びを志向した教育を先進的に行ってきています。写真はそうした日常の授業の一風景です。附属学校では現在文部科学省研究開発学校として探究的市民の育成を目指したカリキュラム開発に取り組んでいます。附属学校での教育効果を検証する追跡調査研究のビッグデータを解析するプロジェクトも附属学校教育高度化センターが協働で実施しています。また少子化社会の中での人生最初期からの乳幼児期の発達や保育に関しては二〇一五年から附属発達保育実践政策学センターで研究が行われ二〇二〇年春の開園を目指して渋谷区に連携保育園の建築も進められています。こうした多様な教育に関わる場があるのも教育学部の魅力です。ぜひ、心身発達のメカニズムや自分の被教育経験を見つめ直したい人、教育を探究しイノベーションを考えたい方、またどこの学部に行こうか迷っているが、人の営みを考えたいという人に文理何れからの進学も可能な教育学部への進学をお薦めします。

(教育学部長/学校教育学・保育学)

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