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最終更新日:2020.05.11

教養学部報

第613号 外部公開

ダイバーシティー時代のサークル活動

太田邦史

東大生にとって教養学部の期間は、サークル活動や部活などにおける人的な交流を通じて、勉強や研究活動だけでは得られない社会的経験を積む大切な時期でもあると思います。私が教養学部生の時にも、サークルの運営に関わりました。その際、人との交流やリーダーシップのあり方、組織運営のやり方などについて、いろいろな貴重な経験をすることができました。したがって、サークル活動・部活は、大学の課外活動ではありますが、教育的にも重要な意義があると考えています。
今回、皆さんに考えて頂きたいことは、本学女子学生の参加を明示的に拒絶しているサークルの存在についてです。かねてから、これらのサークルの方針について大学側が改善するように意見を述べておりますが、依然として対応がなされていない状況に、本学の理事や教養学部・学部長室は残念に思っている状況です。
サークル活動は本学が公認しているわけでもなく、学生によって自主的に行われている活動ですので、大学側がとやかくいう筋合いはないという意見もあります。しかしながら、サークル名に「東大」が入っていたり、新入生勧誘の活動に大学が便宜(立て看板、教室・施設の使用など)を図っていたりしますので、やはり大学の方針に沿った活動をして頂くことが原則となります。
一番問題になっているのが、学生がとりまとめ、発行している新入生向けの『槌音』に掲載されているサークル紹介コーナーです。ほとんどのサークルに関しては、東大生であれば男女関係なく入会できるような内容が記載されています。ところが、一部のインカレ・サークル(テニスなどの運動系サークルが多いようです)では、「メンバーが『東大と女子大』から構成されている」と書かれています。なかには、「男子は東京大学、女子は○○女子大」と明示的に東大女子学生の参加を拒絶しているものすらあります。
聞くところによりますと、このような記述は、相当前から続いているようです。本学の女子学生にとっては、なぜ自分たちだけが排除されるのか、全く理解できないことでしょう。また、PEAK生など海外から来られた女子学生の意見では、日本を代表する大学で未だにこのような差別があることに驚きを感じるという意見もありました。このような運営方針がずっと維持されている背景には、本学の男子学生に東京大学と他大学の女子学生を差別する考えがあるのではないかとの疑念を持っています。本件は、性別による差別を禁止した「東大憲章」の前文に明らかに反しています。上野千鶴子東大名誉教授がこの四月に本学の学部入学式で行ったスピーチでも、隠れた差別の事例として取り上げられました。
今日、政府や企業などでは男女が共同で社会に参画することの重要性が強調されています。二〇一九年五月には、「女性活躍推進法」が国会で成立したほか、経済界が自主的に女性役員比率を三十パーセントまで引き上げようという「30%クラブジャパン」という取り組みも始まっています。本学の五神総長もそのメンバーの一員です。このような時代を迎えているわけですから、本学の女子学生は将来我が国のリーダーとなることが期待されているのです。しかし、本学に入学直後にこのような前時代的な差別に直面してしまうわけで、教員としてとても残念に感じます。また、才能豊かな本学女子学生を排除することに何の問題も感じない本学男子学生が、将来社会でリーダーシップを取ることに、大変心配に感じてしまいます。
本学や教養学部では、持続可能な開発目標(SDGs)に対する取り組みを推進していますが、その中でもジェンダー差別の解消は重要な課題になっています。ご存じの通り、差別的運用を公然と表明するような組織は、現在の社会常識において、昨今相当に問題視される状況になっています。すでに男女共同参画担当の理事から、対応を改めるよう意見書が出されています。それでも全く改善が見られないため、東大女子を排除する活動をするサークルには、本学での活動に関する便宜(本学で勧誘活動をすることや、東大の名称の利用)を一切認めるべきでないという強い対応を求める教員も出てきています。場合によっては、本学の方針に反する運営を行っているサークルについて、その名称をウェッブサイトで公開するなどの対応も考えざるを得ません。そのような状況になる前に、該当するサークルにおいては、ぜひ部員で時間を取ってこのことを真剣に討議し、ぜひ自主的に運営方針(具体的には『槌音』における部員構成に関する記述など)の見直しを行ってほしいと思います。

(総合文化研究科長/教養学部長)

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