HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報614号(2019年12月 2日)

教養学部報

第614号 外部公開

イタリアで考古学を体験する

村松眞理子

今年も九月七日(土)から十四日(土)、前期課程からの参加者五名と大学院生(リーディング大学院統合人間学)四名が「イタリアで考古学を体験」した。東京大学はイタリアで古代ローマ時代の別荘遺跡を二〇〇二年から発掘している。場所はナポリに近いソンマ・ヴェスヴィアーナ市。火山ヴェスヴィオのふもとだ。ただし、紀元一世紀の噴火で埋没したポンペイが南麓なのに対して、ソンマ遺跡は北麓に位置する。スエトニウス『皇帝伝』がアウグストゥス帝が息を引き取ったと述べたヴィラか⁉との期待から発掘がはじまったが、現在は東京大学が調査した壮大なヴィラの中心部は、地質学火山学的調査により紀元五世紀の噴火で埋まったとされている。その進行中の現場で研修参加者は発掘調査を体験する。今年は出土したアンフォラの破片を水洗いしていてパズルのようにぴたりとつながったり、我々が現地に入る直前に出てきた構造物が毎日すこしずつ姿をあらわしこの遺跡で発見された最古の建物の壁部分と判明したり。これは十七年間の発掘調査の後に、アウグストゥス帝と同時代と考えられる建築物が現れたのだ。宿舎で料理や掃除をする共同生活もプログラムの重要な一部。さらに現場でイタリアの大学院生たちと作業し、食事し、最終日にはワークショップを行った。そして何より考古学現場での作業とその都度仮説がたてられ確認され変更されていく知的醍醐味。現地に赴いたからこそ、人文学的知の冒険と越境を体験する旅になったはずだ。

(地域文化研究/フランス語・イタリア語)

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