HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報617号(2020年4月 1日)

教養学部報

第617号 外部公開

<施設・組織紹介> アメリカ太平洋地域研究センターの活動

遠藤泰生

http://www.cpas.c.u-tokyo.ac.jp/

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。駒場キャンパスの研究教育施設を十二分に活用した、活発な学習、研究を皆さんには期待しています。それを支援する組織の一つとして、アメリカ太平洋地域研究センターを紹介します。駒場Ⅰキャンパスの中央を走る銀杏並木の西端近く、十四号館に接続する二階建ての建物にそのセンターはあります。テニスコートを見下ろす桜並木沿いと言ったほうが分かりやすいでしょうか。
このセンターは、北米とオセアニア地域に焦点をあてながら、アメリカ太平洋地域の歴史、政治、経済、文化を研究する専門組織です。アメリカ合衆国に関する国立大学唯一の研究機関として一九六七年に設立され、創立以来今年で五十三年目を迎えます。近年では合衆国の政治や文化だけでなく、中南米やアジア太平洋諸地域と合衆国との関係を意識しながら、現代世界に占めるアメリカ合衆国の意味を多角的に捉える研究を数多く展開しています。例えば、「ネットワーク」の視点からロシアやアジアの諸社会と合衆国のそれとを比較する国際社会学の国際ワークショップを一昨年開催しました。
そうした専門性の高いワークショップに参加するのはもちろん楽しいのですが、新入生のみなさんには、定期的に開催されているセンターの公開セミナーに参加し、大学における研究の最前線を味わってみることをお勧めします。このセミナーでは、国内外の一流の講師を招き、学術の世界での最新の話題を自由に語ってもらっています。米・欧・豪・亜の各地からセンターを訪れる研究者が、地域文化研究や比較文学、国際関係論等を学ぶ学生や教員と活発な議論を重ねています。例えば昨年度は、小説家安岡章太郎の対米認識を土佐の旧郷士の家に育った彼の視点を前面に出しながら検討する比較文学のセミナーや、鯨やラッコの生態を視野に入れた太平洋史の可能性を大胆に討議する国際セミナーを開催しました。鯨が「語る」歴史を我々は将来学ぶことができるのか否か、そのような議論を研究者が真剣に交わしている場が駒場にあるのです。英語でのセミナーがほとんどですが、臆することはありません。講師の話に耳を傾け、自分の疑問を率直に伝えていくうちに、英語での学術的なやりとりがやがて出来るようになります。学部新入生のみなさんも積極的に挑戦してみてください。
アメリカ太平洋地域に関する文献を収集し、全国の研究者や学生に広く公開することも、本センターの重要な活動です。センター図書室は、学生証を提示すれば、誰でも自由に利用できます。大学を退職された先生方が寄贈してくださった、貴重な資料も数多く所蔵されています。明治、大正期に刊行されたアメリカ関係図書の中には、国内外の他の図書館では探すことの出来ないものも含まれます。昨年度は、文化地理学に関する専門の研究書が多数蔵書に加わりました。
現在センターは、南太平洋島嶼諸国やオーストラリアを含むオセアニア地域に関する図書資料を積極的に増やしています。中国、韓国、日本からの留学生が数多く学ぶようになったオセアニア地域は、多文化共生の実験の場とも言われます。それを含めたアメリカ太平洋地域の研究をさらに活発化させていきたいと考えています。詳しくはセンターのホームページを見てください。上に紹介した研究会、図書室の利用規程の他、いろいろな情報が掲載されています。Wi-Fiだってもちろん使えます。来たれアメリカ太平洋地域研究センターへ!

(グローバル地域研究機構/英語)

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