HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報618号(2020年5月 8日)

教養学部報

第618号 外部公開

〈後期課程案内〉 教養学部 教養学科

学科長 西川杉子

多様化する関心に応える

教養学部は前期課程の学生全員が学ぶ場ですが、同時に、後期課程の一学部でもあります。その文系部門である教養学科は、一九五一年に設立されて以来、学際性と専門性の両立を掲げて高度な教養教育を実践し、数多くの優れた卒業生を輩出してきました。
教養学科のカリキュラムの特徴は、①少人数教育、②サブメジャー・プログラム、③高度な外国語教育の三つです。これらは、多様化する学生の関心に応えようとするもので、学生が一つの狭い専門領域にこだわらずに授業を選択することで、広く視野を広げつつ、四年生までに研究テーマを絞り込むことを可能にしています。後期課程の授業には二年生も2Aから参加できますが、①の少人数教育は、前期課程とはかなり異なると感じるかもしれません。また専門的知見に基づき、熱い議論が交わされる授業の雰囲気に驚く人もいるかもしれませんが、概して、学生と教員の距離が近く、自分の関心に合わせた知識を教員から引き出していくことのできる場とも言えます。
②のサブメジャー・プログラムとは、所属するコース(主専攻)の科目のほかに、他のコースが提供する科目群を、十五単位程度、副専攻として履修するプログラムのことで、修了生には、卒業時、卒業証書とともにプログラム修了証が授与されます。例えば、教養学科の「地域文化研究分科」のコースに所属しながら、「総合社会科学分科」のコースを受講することが可能です。異なる専門の授業を受講しながら自分のテーマを見つけていく─これは大変なことですが、本人の努力次第でやりがいのある作業になるはずです。③の外国語教育については、教養学科では、自分の専門とは別に前期課程で外国語を担当する教員が多数、所属していますから、大学随一の充実した科目群が揃っていると自負しています。日本語・英語に加え、もう一言語の高度な習得をめざす後期トライリンガル・プログラム(TLP)もあります。在学中に海外に留学する学生が東大の中でも多いのは、こういった教養学科の特徴の現れでしょう。
さて、教養学科には、「超域文化科学分科」、「地域文化研究分科」、「総合社会科学分科」という三つの分科と、英語で授業をおこなう「国際日本研究コース」が設置されています。
超域文化科学分科は「文化人類学」、「表象文化論」、「比較文学比較芸術」、「現代思想」、「学際日本文化論」、「学際言語科学」、「言語態・テクスト文化論」の七コースから成り、学問領域や地理的境界、文化ジャンルを横断する学際性と総合性を特徴としています。扱う対象は伝統儀礼や民族芸能から社会の高度情報化にともなって変容をつづける芸術や文学、またその根底となる言語活動や思想営為に至るまで実に多彩ですが、いずれにしても、対象に密着しつつ汎く文化の行方を見据える複合的な視点を養います。
地域文化研究分科には「イギリス研究」、「フランス研究」、「ドイツ研究」、「ロシア東欧研究」、「イタリア地中海研究」、「北アメリカ研究」、「ラテンアメリカ研究」、「アジア・日本研究」、「韓国朝鮮研究」の九コースが設置され、人文/社会科学の手法を総動員して特定の地域や地域間の交流を多角的に学び、「地域文化から世界」を考察します。また学問の性質から当然のことですが、専門的な外国語運用能力の習得をとりわけ重んじ、多くのコースで卒論を外国語で書くことが要求されています。チャレンジングではありますが、得られるものは大きいでしょう。
総合社会科学分科を構成するのは「相関社会科学」と「国際関係論」の二コースから成ります。前者は社会科学の諸分野(法学、政治学、経済学、統計学、社会学)を統合しつつ多様な社会現象を総体的に理解することを、後者は国家、またその他のアクターの複雑な相互関係を視野に入れ、グローバル化する現代世界を複合的に研究することをそれぞれの目標とします。両コースはカリキュラム(必修科目要件など)こそ異なるものの、学問上のセクショナリズムを超えたディシプリン横断的なアプローチを行う点で共通しています。
国際日本研究コースは、やはり人文/社会科学のさまざまな知見とその適用方法を習得し、日本と東アジアの文化・社会を国際的・学際的な視点から学ぶ英語のコースです、。多くの留学生とともに学びながら、既成の理解を引っくり返す真の発見をめざします。
いかがでしょうか。教養学科はやる気のある学生の熱意に応える学科です。

(教養学科長/地域文化研究/英語)

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