HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報618号(2020年5月 8日)

教養学部報

第618号 外部公開

〈後期課程案内〉 法学部

法学政治学研究科長・法学部長 大澤 裕

法学部への招待
http://www.j.u-tokyo.ac.jp/

法学部で学ぶこと
法学部というと、真っ先に連想されるのは、「六法」と呼ばれる分厚い法令集かもしれません。そして、皆さんが抱く法学部の勉強のイメージは、六法の内容を覚えることかもしれません。しかし、このイメージは誤解の産物です。次のような本学部の教育研究上の目的と比べてみてください。「法学と政治学を中核とした教育研究を通じて、幅広い視野をそなえ、法的思考と政治学的識見の基礎を身につけた人材を養成する」(東京大学法学部規則より)。どのようなことに気付くでしょうか。
まず、「◯◯法」と名の付く法律科目の授業では、確かに、六法は不可欠です。しかし、そのような法律科目の学習を通じて身につけることが期待されているのは、条文の知識そのものではなく、「法的思考」です。
世の中に起こる問題は、実に様々です。そのすべてを予め想定して解決のあり方を法律の条文として定めておくことは、そもそも無理な話です。また、条文があっても、具体的な問題がそこに当てはまるかどうかは、文言だけを見ても判断がつかないこともしばしばです。このように条文がないときや条文の守備範囲がはっきりしないときを含め、生じた問題の構造を分析し、個別の条文だけでなく、その背後にある基本的な「ものの考え方」にも照らしつつ、一定の根拠を持った解決を導き出す─そのような知的作業を担うのが「法的思考」です。それはまた、新たな法を創る力にも通じます。
本学部では、そのような知的作業を担う力を十分に身につけてもらえるよう、「◯◯法」と名の付く授業科目はもちろんのこと、法の理論や機能、歴史、比較(外国法)等を扱うもの(基礎法学)や経済学に関するものも含む多様な授業科目を用意しています。
引用した規則に現れたもう一つ大切なことは、本学部の教育研究には「法学」だけでなく「政治学」という柱があることです。それは、本学部のコースとして、法学系の「法学総合コース」「法律プロフェッション・コース」と並んで、政治学系の「政治コース」が設けられていることにも現れています。さらに、これらの二つの柱はバラバラに存在している訳ではありません。法学系のコースにおいても、政治学系のコースにおいても、「憲法」「民法第一部」「政治学」の三科目は必修です。コースによる比重の違いはあれ、本学部では、法学と政治学の両者に亘って基礎的素養を身につけることが目指されています。それは、法と政治が相互に連関しつつ人の社会生活を支えている(法の下に政治が行われ、政治によって法が作られる)ことに照らせば、十分理由のあることです。
このように法学部で学ぶこと、学べることは、おそらく皆さんが想像するよりもずっと広く、また、皆さんの知的好奇心に十分応えるものであるはずです。
法学部のコース制
すでに言及したように、本学部ではコース制がとられており、学生は、以下に示すような三つの類(コース)のいずれかに所属して学習を進めます。類の所属は、各学生の選択によります。類ごとの定員はありません。
第一類は、「法学総合コース」で、多様な進路に応じて自主的に、法学を広い総合的視野のもとで学習するコースです。実定法科目(「◯◯法」)に重心を置きつつも、基礎法学系や政治系、経済系を含め、幅広くバランスのとれた学習を行います。
このコースには、公務員を目指す人のための「公共法務プログラム」と国際的ビジネスやマネジメントを目指す人のための「国際取引法務プログラム」という二つの履修プログラムが設けられています。指定されたプログラム科目をすべて修得して卒業要件を満たすと、学位記とともにプログラム修了証が授与されます。
第二類は、「法律プロフェッション・コース」で、法曹や企業等における高度な法律専門職を目指すという具体的進路を想定した法学分野の特別コースです。法科大学院に法学既修者として進学するのに必要な授業科目を必修科目としています。
第三類は、「政治コース」で、政治系科目を中心に幅広くバランスのとれた学習を行うコースです。法学部では、いわゆる卒業論文は課していませんが、第三類では、「リサーチペイパー」と呼ばれる小論文の作成が必修とされています。
なお、二〇二一年度の法学部進学生から、「法科大学院進学プログラム」を設けます。どの類に所属する学生も登録できる履修プログラムで、同プログラムの修了(予定)者は法科大学院の特別選抜の対象となります。詳細は、法学部のウェブサイトをご覧ください。
東京大学法学部の強み
本学部は、明治十年(一八七七年)四月に、東京開成学校(法・文・理の三学部)と東京医学校(医学部)の合併によって東京大学が創立された際、設置された学部の一つです。法学・政治学の分野において、日本で最も由緒のある、そして最大級の教育研究機関です。多様な専門領域をカバーする七十名を超える教授・准教授は、その誰もが法学・政治学の最先端の研究に従事し、かつ、その成果を生かした教育を展開しています。その有機的総体としての本学部の教育研究は、幅の広さ、奥の深さいずれにおいても、他の追随を許さないものです。
また、本学部は、東京大学という日本トップの総合大学の一部局です。現代社会の最先端で生じる複雑な問題は、しばしば法学・政治学の枠を超え、理系を含めた分野を横断した広がりを持ちます。デジタル革命と呼ばれる技術革新の問題はその代表例です。本学部が、東京大学の一部局であることは、最高水準の分野横断・融合型の教育研究が可能であることを意味します。
いかがでしょうか。本学部の扉を開けて、法学・政治学の最先端の知の世界へと踏み込んでみませんか。

(法学部長/刑事訴訟法)

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