HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報618号(2020年5月 8日)

教養学部報

第618号 外部公開

〈後期課程案内〉 理学部

理学系研究科長・理学部長 星野真弘

自然界に潜む謎への挑戦
https://www.s.u-tokyo.ac.jp

hoshino_理学部.jpg人類は数百万年前に二足歩行を始めて以来、身の回りに起きる自然界の出来事に好奇心を持ち、その謎を解き明かすことで生活を豊かにしてきました。古代人も空を見上げて太陽が大地に燦燦と降り注ぐことや、その光を受けて大地には草木が生い茂り多種多様の生物がいることを見て、いろいろな疑問をもったことでしょう。不思議だと感じたのは単なる好奇心であったかも知れませんが、人類はそのような自然の姿を観測して、それらの仕組みを解析し、理解した事柄を日々の生活に取り込むたゆまぬ努力を続けて今日の科学の発展へとつなげてきました。理学は、自然界の普遍的真理を解明することを目指し、自然界に働く法則や基本原理を探求する純粋科学ですが(東京大学理学部憲章)、理学の営みは人類社会の繁栄を導いています。
東京大学理学部(学部)では、物質を構成する素粒子のミクロ世界から、原子や分子、細胞や生物、地球や太陽系、そして広大な宇宙まで、ありとあらゆる自然界の根源的な問いに答えるべく、十の学科(数学科、情報科学科、物理学科、天文学科、地球惑星物理学科、地球惑星環境学科、化学科、生物化学科、生物学科、生物情報科学科)に分かれて学びます。自然界を支配する理を、アプリオリに受け入れるのではなく、そこに潜む原理や真理を実験・観測・理論的考察でもってとことん探究します。また大学院では組織上、数学と情報科学がそれぞれ別の研究科(数理科学研究科と情報理工学研究科)に属しますが、他の理学の分野は、理学系研究科の五つの専攻(物理学専攻、天文学専攻、地球惑星科学専攻、化学専攻、生物科学専攻)で学ぶことができます。
理学部は学問の礎を作るところ、工学部等は科学技術の応用(出口)を重視するところといわれますが、基礎と応用の両者の異なる側面が相まって、今日の我々の生活を豊かにする科学技術を支えてきています。理学の純粋な知的好奇心から始まった基礎研究が、最先端技術に応用されて役立っているものがたくさんあるのです。例えば、携帯電話で利用されているGPSマップは、アインシュタインの相対性理論がなければ正確な位置情報を出すことはできませんでした。パソコンなどの半導体の動作は、ミクロな世界を支配する量子力学の原理に基づいています。生命のしくみに迫るゲノム科学は、医療や食糧問題などにも応用されています。理学は日常生活や未来社会の発展とも密接にかかわる学問なのです。
また理学部では、自然の謎を紐解くプロセスを通じて、論理的な思考法を学び、人類社会の抱えている様々な問題に対して解決する力を身に着けることもできます。我々の抱えている困難な課題、今まさに世界的に深刻な問題である地球温暖化に対しても、論理的かつグローバルな視点で考える理学のアプローチが必須です。そして我々の理学部出身の先輩たちは、大学や研究所等のアカデミアだけでなく、幅広く産業界やビジネス界でもたくさん活躍しています。理学部での学びは、人類社会において大きな力となることでしょう。
更に東京大学理学部では、理学の教育研究と並行して国際化にも力をいれています。将来世界で活躍できる優秀な人材を輩出すべく、学部生・大学院生の海外派遣と受入れを積極的に推進してきました。また化学科では学部の講義も英語で行っており日頃から留学生と一緒に勉強ができる環境が整えられました。そして大学院の留学生は全体の六分の一程度に達しています。世界中の優れた学生や研究者と交流することで、多様な文化やグローバルな視点も体得していただけるでしょう。
皆さんも自然界の不思議に目を向けて、その謎解きに挑戦してみませんか。誰も解らなかった問題に挑み、自分で答えを見出す行為は、チャレンジと喜びが絶え間なく続く壮大な冒険です。理学部は、きっと皆さんの探究心と好奇心を大いに満たしてくれるでしょう。

(理学部長/地球惑星科学)

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