HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報618号(2020年5月 8日)

教養学部報

第618号 外部公開

〈後期課程案内〉 教育学部

教育学研究科長・教育学部長 秋田喜代美

探究し未来社会を創り変革する人を育む「教育」
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/

未来社会の基盤を創る教育
本郷キャンパス赤門を入り向かって左手の建物が、教育学部棟です。教育学部と聴くと、先生になることを志す人が進学する学部というイメージを持つ人がいるかもしれません。しかし、本学の教育学部は、教員養成を主眼とする教員養成大学の教育学部とは、カリキュラムもコース組織も全く違います。東京大学教育学部の学部卒業生の中には、教師になる人や教育産業関係で働く人もおられますが、実は数多くの人が、多様な一般企業や官公庁、専門職に就き活躍されています。それは、学校教育だけではなく、生涯にわたり人の交わる場には必ず教え学び、育ち育てられるという教育の営みがあり、多様な場で求められ役立つ知を創り提供する場として教育学が機能しているからと言えます。これからの社会を探究する学びのあり方を問う学部ということもできます。
教育は、社会を創り変革する人材育成の要です。グローバル化が進み、これからの社会を担う人材育成は、どの国でも中心となるトピックです。人工知能(AI)に多くの仕事が取って替わられるようになっても、問いを持ち、創造的に新たな価値や事物を生み出すのは、教育の営みです。その営みのプロセスやメカニズムについて、乳幼児期から初等・中等教育、高等教育そして成人・高齢者の生涯学習まで、文化や社会の中で人が育ち学ぶ、脳や心身発達のメカニズムやその発達を支える社会構造や制度、環境などの支援を、幅広く多様な学術分野から実証的・実践的に問う学術研究やその教育を行っているのが、教育学部です。長期的な視点を持って社会を捉えると同時に、これから人類が直面する課題を見つめ、解決を図る手応えや社会的使命を持った学問を行う学部です。
被教育経験を振り返り、可能性を探る
教育学部は、戦後に新しい精神で創られた、東大では新しい学部です。といっても、すでに今年で七十一年目となります。日本の教育の向かう方向性を示し、教育実践や教育・児童福祉等の政策に対しても、戦後一貫して民主主義にもとづく公教育をリードする役割を担ってきています。学生の皆さんは、大学に入るまでにおよそ一万二千時間あまりの授業時間を、小学校から高校までの学校において受けてきています。その被教育経験を振り返ると同時に、様々なフィールドワークや調査研究、実験などを通して、自分の持っていた教育に対する考え方を広げ、問い返し更新する場でもあります。また脳科学等からの人の育ちのメカニズムを捉える研究室もあります。学部生全員が必修で卒業論文を書くことになっています。その経験を通して、教育に関しての問い方を学び、自らの問いを探究する学びの機会が得られるようになっています。教育学部は、専任教員約四十七名一専攻五コースの小さな学部ですので、アットホームな雰囲気と自由闊達な風土の中で、それぞれの学生の皆さんが積極的に活躍する機会に恵まれています。また女性教員も女子学生の比率も、学部・大学院共に、最も高い学部です。少数の多様な声を対等に聴くこと、多様性と包摂性を重視しています。附属バリアフリー教育開発研究センターではインクルーシブな教育の研究を行い、海洋教育センターでは持続可能な環境のための海洋教育に関わる研究を行い、心理教育相談室でも心理相談を実施し、臨床心理士等のカウンセラーの育成教育研究を行っています。
附属学校・園と附属センターとの協働
充実した附属施設も、教育学部の魅力です。教育学部には附属中等教育学校があります。この学校は、遺伝と環境の影響に関わる研究、いわゆる双生児研究を長年にわたって実施してきました。また協働的で探究的な学びを志向した教育を長年にわたって行ってきています。写真はそうした日常の授業での一風景です。附属学校では昨年まで文部科学省研究開発学校の指定を受け探究的市民の育成を目指したカリキュラム開発に取り組んできました。附属学校での教育効果を検証する追跡調査研究のビッグデータを解析するプロジェクトも附属学校教育高度化効果検証センターで実施しています。また少子化社会の中で人生最初期の乳幼児期の発達や保育に関しては附属発達保育実践政策学センターで研究が行われ今年四月から渋谷区立渋谷保育園が連携保育園となり子どもを中心とした街づくりが始まりました。教育に関わる多様な場の経験ができるのも教育学部にしかない魅力です。ぜひ、心身発達のメカニズムや自分の被教育経験を見つめ直したい人、教育格差問題等に取り組み社会変革のために探究しイノベーションを考えたい方、またどこの学部に行こうか迷っているが、人について考えたい人に、文理いずれからも進学可能な教育学部への進学をお薦めします。

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協働的な探究学習に取り組む東大附属中等教育学校の生徒たち

(教育学部長/学校教育学・保育学)

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