HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報619号(2020年6月 1日)

教養学部報

第619号 外部公開

<時に沿って> 興味喚起

河合玲一郎

二〇二〇年四月一日付けで大学院総合文化研究科国際社会科学専攻に着任しました河合玲一郎です。また、二〇一七年に設置された数理・情報教育研究センターの一員でもあり、当センターにおきましては主に数理・データサイエンス教育強化拠点コンソーシアムに関与していくことになっています。
学部は東工大、そして東工大大学院からの交換留学でカリフォルニア大学、博士号をジョージア工科大学にて取得後、日本に戻り、大和証券SMBCにて株式自己運用とデリバティブ業務に従事し、そして大学教員として大阪大学、英レスター大学と豪シドニー大学を経て、このたび東大駒場に参った次第です。これまで駒場にも東大にもまったく無縁の人間ですので、今回の新天地への赴任は大変光栄であるとともに、身が引き締まる思いです。
専門分野は、確率論や統計学周辺の理論と数値解析です。東工大では"確定的な応用数学"の研究室から学部を卒業しましたが、米国にて大学院講義を受けていくうちに"確率的な応用数学"に興味がどんどん移っていき、その流れで自然に現在の研究分野に落ち着きました。"確率的な"とは、いわゆるランダム、すなわち(その法則が"確定的"に記述されているとしても)実際に出てくる事象は予想がつかないということです。そんな"確率的な"事象を"確定的な"理論で記述するのが確率論というわけですが、実際にコンピューターを用いて"確率的な"事象を発生してみると、"確定的に"記述された厳密な各種理論が綺麗に再現されることに、学生時分の私は例えようのない不思議な深さを感じました。今から思えば何のことはない当然の結果なのですが、詰まるところ人間が何かに興味を持つきっかけというのは、この程度の些細な感覚であるように思います。
学生のみなさんにとっては、多種多様な専門の先生方が在籍される駒場は、いろいろなことを聞き、触れ、体験するには、またとない恰好の環境かと思います。是非この機会に、自身の将来につながりうる興味、関心を喚起してもらえれば、と切に思います。それは私にとっても同様のことで、理系文系の入り混じる駒場での日々はとても目新しく刺激あるものになると思います。また英レスター大学と豪シドニー大学における十年間で慣れ親しんだ五〇分講義と比較すると二倍以上の一〇五分講義にすばやく慣れるために、思考回路を一旦再起動する必要がありますが、駒場の多様性と刺激を楽しませていただきながら、日々一歩一歩精進していきたいと考えております。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

(国際社会科学/経済・統計)

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