HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報619号(2020年6月 1日)

教養学部報

第619号 外部公開

<時に沿って> 離れがたき駒場

鎌倉夏来

二〇二〇年四月に総合文化研究科の広域科学専攻広域システム科学系に准教授として着任した鎌倉夏来です。駒場の新任教員なのかというと、二〇一六年五月より同じ所属の人文地理部会の助教として勤務していたため、このタイミングで執筆するのは少し不思議ではあります。ただ、今年度からは地域未来社会連携研究機構という機構の仕事が本務になり、役職も変わるなど、学生時代からほぼ切れ目なく続いてきた駒場生活における新たな局面であることは確かです。
これまでの自身の駒場生活を思い返すと、まず学部時代は運動会卓球部の練習もあり、土日も基本的に駒場にいたため、かなり長い時間を駒場で過ごしていました。大学院時代も駒場の所属でしたが、国内外へ調査で出かけていることも多く、自宅で研究する方が集中できたため、学部時代ほど駒場キャンパスへの帰属意識が強くなかったかなと思い出されます。大学院修了後は他の大学でのポスドクが決まり、このまま駒場との関係が希薄になっていくかと思いきや、さまざまな偶然ですぐに助教として出戻り、その後もあまり想定していなかった展開で現職に至っています。そのため、早く駒場を旅立たねばと思ってきたにも関わらず、なぜかまだまだ離れられないなという感覚が強いです。
私の専門は経済地理学という分野で、経済活動の地理的な特徴に対する関心を強く持っています。そのなかで、特に製造業の立地と地域との関係について研究しています。四月から本務となる地域未来社会連携研究機構は、こうした研究関心とも密接に結びついています。当機構は、地域の課題解決にかかわる東京大学内の十一の部局が連携し、統合したプラットフォームを構築することで、研究・地域連携・人材育成等における相乗効果を発揮することを目的として、二〇一八年四月に設置されました。事務局は駒場の十号館に置かれており、石川県の白山市と三重県の四日市市にサテライト拠点を設け、自治体や地域のシンクタンクの方々と協力しながら研究・教育活動を行っています。まだまだ手作り感のある組織ですが、連携部局をはじめとした学内の先生方や、外部連携先の皆様に支えられながら、持続可能な体制づくりを進めているところです。
このように、駒場から旅立つという分かりやすい節目がなく、ついつい慣れ親しんだ駒場の環境に甘えてしまいがちだった私ですが、研究者としてもっと成長するためには、これまで以上に頑張っていかなければならないなと思いながら、駒場十四年目の春を迎えています。
この原稿こそは、駒場キャンパスの研究室で駒場への思いを馳せながら書きたいところだったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が発令され、自宅で書くことを余儀なくされてしまいました。この原稿が掲載される頃には、「この時期の駒場はいつもこんな感じだな」、と当たり前に思えていた日常に可能な限り近づいていることを切に願っています。

(広域システム科学/人文地理学)

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