HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報621号(2020年10月 1日)

教養学部報

第621号 外部公開

<時に沿って> 駒場キャンパスに戻ってきて

横内智行

二〇二〇年六月より広域科学専攻相関基礎科学系の助教に着任した横内智行と申します。専門は物性物理で、これまで磁性体やスピントロニクスの研究を中心におこなってきました。特に、磁気構造のダイナミクスと輸送応答の関係性に興味があり、最近はこれらと機械学習との関連にも興味を持っています。本郷キャンパスで博士課程を修了したのち、二年間ほどの理化学研究所での勤務を経て、前期教養学部以来およそ九年ぶりの駒場キャンパスになります。新しい建物ができたり、利用していたラーメン店や弁当屋がなくなったりと変わった部分もあるものの、一方で当時のまま変わっていない部分も多く、懐かしさも感じています。
駒場で過ごした前期教養時代を振り返ってみると、数学、物理、生物、航空工学など、多種多様な分野を志望する人達と過ごせたことが、非常に有意義であったと改めて思います。大学に入学した当時、私は工学的な応用に興味があり、電子工学の分野に進みたいと考えていました。しかしながら、前期教養で一年間学んでいるうちに、より基礎的な物理学の道に進みたいと思うように、心境が変化していきました。このことが、物理の研究者としての道に進むきっかけとなったわけですが、この変化は特に何か決定的なきっかけとなる大きな出来事があったわけではなく、前期教養で過ごすうちに、徐々に自分の視野が広がったことにより生じた変化だと思います。その要因としては、色々な分野を志望する人たちと日々過ごす中での、何気ない雑談や、友達が受けるからという理由で講義を受けてみる、といったことが大きかったのではないかと思います。現在では、この進路は私にとって良い選択だったと思っており、自分の視野を広げてくれたこのような駒場での環境は非常に素晴らしいものだったと感じております。もちろん、私の学生時代もすでにそうでしたが、近年はインターネットを使い、様々な分野の情報を簡単に手に入れることができます。しかしながら、そのような状況でも自分の興味の幅を広げるということはなかなか大変なことで、自分が属するコミュニティーの環境というものが、それには重要になってくるのかなと思います。
研究者として戻ってきた教養学部ですが、私の所属する広域科学専攻相関基礎科学系にも、物理学だけではなく生物や化学、科学史まで様々な分野の研究室があるようです。また、研究所とは異なり、さまざまな学生と接する機会も多いと思います。この様な環境で、前期教養時代の様に、ふたたび自分の研究者としての視野をさらに広げていけたらと考えています。

(相関基礎科学/物理)

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