HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報626号(2021年4月 1日)

教養学部報

第626号 外部公開

辞典案内 2021 ロシア語

鳥山祐介

①研究社露和辞典(東郷・染谷・石山・磯谷編、研究社、1988年版、2784頁、7800円)収録語数26万語。現在日本で出版されているロシア語辞典の中では最大の収録語数を誇る。用例も極めて豊富である。文法や類義語の説明も詳しい。著名な人名や地名など百科事典的な項目も掲載されている。巻末には略語やロシア人の代表的な姓・名の詳しいリストも付されている。問題は1988年の初版発行以来改訂がなされていないことで、それ以降の社会およびロシア語の変化には対応していない(例えばпрезидентを引くと「1. (フランス・アメリカなどの)大統領」「2. 総裁, 会長, 社長」という説明しか出ていない)。とはいえ全体の情報量は圧倒的で、ロシア語に一定以上真剣に関わる者にとって必須の辞書であることに変わりはない。電子版としてLogoVistaによる②PC版(2019年、サイト案内価格14773円)、③iPhone / iPadおよびAndroid用アプリ版(2019年、15000円)があり、いずれも下記⑧和露事典が同時収録されている。既存の項目は紙版と同じだが、Интернет, Сетьなど新しい項目も一部付け加わっている。検索機能は使いにくい面も多い。
④プログレッシブロシア語辞典(中澤英彦編集主幹、嵐田、加藤、北村、長谷川編、小学館、2015年、4500円) 収録語数は6万語で辞典としては中規模だが、21世紀の今のロシア語の現状を反映した現時点で唯一の辞典で、口語・俗語やIT用語をはじめとする新語が豊富に掲載されている(Майданを引くと「(キエフの)独立広場:そこで起きた反政府デモ」という直近の情勢に対応した説明も)。現代の社会、ロシア事情に関わる記事を読む上では必携である。簡易な(1万項目収録)和露辞典も巻末に付されている。⑤ iPhone、iPod touch および iPadに対応したアプリ版(物書堂、2015年、2900円)もある。初学者も出会うような重要単語についてはリンク先で活用表を瞬時に確認することができ、また直接音声を聞くこともできる。画面上の単語を長押しするとその単語の項目に飛べる機能があり、説明中で気になった単語を芋づる式に辿っていくこともできる。用例の多さでは研究社露和に及ばないが、初学者への配慮もなされている。
露露辞典は数多く刊行されているが、一巻本としては⑥オジェゴフС.И. Ожеговの「ロシア語詳解辞典 Толковый словарь русского языка」がソ連時代よりよく知られいくつも版を重ねている。またロシア語の奥深い森に分け入るのであれば⑦ダーリВ.И. Дальの「現用大ロシア語詳解辞典Толковый словарь живого великорусского языка」(1863-67)の存在は常に念頭に置いておきたい。
⑧和露辞典としては研究社和露辞典改訂版(藤沼貴編、2011年、8000円)が語彙数(6万9千語)、各分野の囲み記事ともに充実している。

(言語情報科学/ロシア語)

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