HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報626号(2021年4月 1日)

教養学部報

第626号 外部公開

静かなコマメシを

田村 隆

 齋藤希史先生、堀田知佐先生に続き、コマメシを担当することになった。私は江戸時代の『豆腐百珍』(一七八二年刊)から今日の『美味しんぼ』まで、食にまつわる本を読むのが好きで、この欄も着任以来愛読してきた。これから紹介する各店にお出かけの際は、営業時間などを確認の上、食事中は会話を控えたり、混雑時はテイクアウトを利用するなど、お互いの感染予防に十分御留意いただきたい。
 まずは王道の「学食」、生協食堂から。一階「若葉」(一食)と二階「銀杏」(二食)。私も普段の昼はほぼこのどちらかで、『逆評定』にも目撃情報を書かれたことがあるが、二限が終わると一気に混雑するのでなるべく十二時台は避けたいところ。SuicaやPASMOに付ける電子マネーの「学食パス」を利用すれば、月ごとの利用状況と栄養バランスが記録される。二階の玄米オムライスやコンボ(アラカルト四品)、一階の揚げだし豆腐と冷やし担々麺(夏季限定)を薦めたい。新メニューのコンテストで選ばれた駒場丼はタコライス風で、タコミートの色は一号館、上に乗るチーズは銀杏並木を表すという。二〇一八年には『東京大学駒場キャンパス 一食全メニュー総覧』という同人誌が編まれ、翌年二食の情報も追加された。食堂の隣にはイタトマ系列の「Caffé VIGORE」(ヴィゴーレ)があり、パスタランチのほか、窓からの桜や新緑の眺めがよく喫茶にも最適。21KOM­CEE West地下の「KO­MOREBI」ではたっぷり注がれたコーヒーをテイクアウトできる。
 「杯を上げよ」という意味のフランス語が店名の「Lever son Verre」(ルヴェソンヴェール)は、昼は千百円でフレンチを楽しめる。日替わりの肉料理もしくは魚料理を選び、パン・サラダと食後のコーヒーもしくは紅茶が付く。東大駒場友の会の会員には飲み物のお替わりをサービス。二階の店名「橄欖」(かんらん)はオリーブの訳語。教養学部前身の旧制一高の校章はオリーブと柏葉だった。一階よりもフォーマルな空間で、『恒河沙』二〇八号(二〇一九年四月)の「駒場ミシュラン」でも「優上」評価。
 三昧堂の前を通って西門を出る。駒場Ⅱキャンパスの時計台横の生協食堂はかつて国産旅客機YS-11の設計室だったという歴史的建物。堀越二郎達も出入りしていたのだろう。ピザとパスタの「ape」(アーペ)やその奥の「ニッコクトラスト食堂」(大豆ミートの天むす「そいむす」は月曜限定)、日替わりのキッチンカー「駒場東大RCAST村」もキャンパス内。周辺にも正門隣の「東京和茶房」や向かいの「林檎の樹」、「白系スパゲッティ」などがある。駒場公園の奥にある日本近代文学館内の「BUNDAN」は本に囲まれたカフェで、メニューには文豪の名が付く。コーヒーのモカは「寺山TERAYA­MA」。由来は教科書でお馴染みのあの短歌のはず。
 次に駅西口側へ。蕎麦屋門の愛称を持つ坂下門を出てすぐの蕎麦処「満留賀」(まるか)は、昨年六月に惜しまれつつ閉店した(他にも鰻の「宮川」や「Bleu Table」(ブルーターブル)、「英香」など、昨年は閉店が相次いだ)。建物の二階はお好み焼きともんじゃ焼きの「楓」。
 駒場小学校側の坂を上ったところにある「Le Ress­ort」(ルルソール)は遠方からのファンも多いという人気のパン屋。喫茶店の「DORA」では、各所に並んだ市松人形の視線を感じながらのコーヒーと読書もよいし、ポークジンジャーなどのランチもある。「COLO­RADO」はドトール系列でモーニングもあり。昨年五月には坂の途中にイタリア料理店「MARUMOREO」がオープンした。
 駅西口に戻って今度は淡島通りに出る坂を上ってゆくと、右手にあるのが「Una pesca bianca」(ペスカビアンカ)。生牡蠣が名物だが、ランチメニューもある。淡島通りの菓子処「さか昭」の焼肉弁当は作りたてで、近くの高校生も常連の模様。
 一方、東の梅林門を出て階段を下りると東大前商店街へ。「菱田屋」はテレビや雑誌でも取り上げられる人気店でいつも行列だが、昨年からテイクアウトも始まった。生姜焼きと麻婆豆腐が有名で、『菱田屋の男メシ!』(二〇一七年)というレシピ本まである。「キッチン南海」の黒いカツカレーも名物。ネパールカレーの「MUSKAN」に、近くの「STAN」はサンドイッチストア。昨年はオンライン開催だったが、私の所属する比較文学比較文化コースでは「角屋」のミックスサンドで秋にサンドイッチパーティーが開かれる。「TOKYO PASTA WORKS」ではその「角屋」の店員さんお墨付きの生パスタを。「みしま」では、熱々のたこ焼きのほか、珍しいカレーもんじゃをお薦めしたい。一九四九年創業(教養学部と同い年)という「太田屋」は、精肉店の弁当だけあって、ミートボールと揚げたての唐揚げが人気。スイーツでは、「IL BIGNE」(イルビニエ)のシュークリームはクリームと皮が分かれていてサクサク感が特長。隣はティラミス専門店の「Tiramisu Home Made」。
 体育館側の裏門を出た界隈では麺類が思い浮かぶ。蕎麦の「絆」は天ぷらとごはんの付いたランチメニューがお得。ゆきラーメンが看板の「山手」は昨年六月にいったん閉店したが、近くの鶏そば「一信」(本郷に移転)があった場所にリニューアルオープンした。隣には弁当の「たけ」がある。
 野球場の土手の桜並木を通って北門を出る。今の季節は桜とアマナが美しい。出てすぐの三叉路は今日のランチの分かれ道。三田用水の暗渠にほぼ沿ったコスモス(航研)通りを左に少し歩くと山小屋風の「フレッシュネスバーガー」一号店が見える。さらに進むと、生ハムとチーズの「PIATTI」(ピアッティ)や二郎系ラーメンの「千里眼」がある。夏季限定の冷やし中華も人気。逆に門から右方向に歩けば、サンドイッチやフルーツミックスアサイー(スムージー)の「BONDI」が見えてくる。神保町のカレーは「ボンディ」(BONDY)だが、富ヶ谷のこちらは「ボンダイ」。門に戻り、通りを渡ってすぐのところにはアコウダイなどの焼魚定食がお薦めの「うしお」、そのまま進むとフレンチの「Chambre Avec Vue」(シャンブルアヴェクヴ)がある。「岬屋」の栗蒸羊羹も名品。渋谷富ヶ谷二郵便局の先の「むぎ」では豊洲の美味しい魚を楽しめる。メニューは日替わりだが、冬にナメタガレイの煮つけがあったら是非召し上がれ。

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(超域文化科学/国文・漢文学)

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