HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報627号(2021年5月 7日)

教養学部報

第627号 外部公開

〈後期課程案内〉教養学部教養学科 混沌とする世の中と向き合うために

学科長 竹野太三

 私たちが当たり前と考えていた生活様式や習慣を様々に変容させるようになって,1年以上になります。せめて他のことは平穏であってほしいところですが,自然災害はもちろん,政治的・経済的不安定に端を発する様々な問題は国内外に数多くあります。世の中が平穏であることは必然ではなく,私たちが実現するよう努力し続け,次の世代へと引き継いでいくものだと,改めて思います。未来を担う皆さんにとって,進学選択は重要な決断だと思います。ご自身の学問的関心を見極めていただくことを前提に,本項では皆さんの進学選択先の一つである,教養学科について簡単にご紹介します。
 教養学科には,超域文化科学分科,地域文化研究分科,総合社会科学分科,そして国際日本研究コースがあります。教養学科全体の特徴として,少人数講義の数が多いことを挙げたいと思います。教養学科には,前述した各分科にもコースが複数あり,それぞれのコースの在籍者が少人数になるため,必修科目も含めて少人数クラスが自然に実現するのです。コースの数が多いことは,専門分野の細分化を意味します。皆さんの学問的関心が一致する専門分野があれば,という前提ではありますが,専門分野を少人数クラスで学ことができるのは,大変好ましいと思います。
 さて,各分科がさらに複数のコースが分かれていると,一つのコースに在籍することによって,狭い範囲のことしか学べないのではないかという懸念を抱かれるかもしれませんが,そうではありません。同じ教養学科ですから,他のコースの科目はもちろん,他の分科の科目を履修することもできます。つまり,ご自身の専門性を,一定の自由度を持ってカスタマイズすることができるのです。また,指定された要件を満たすように他分科の単位を取得すれば,副専攻(サブメジャー)として認められ,卒業証書とともにサブメジャー・プログラム修了証が授与されます。
 教養学科全体のもう一つの特徴は,学際的かつ国際的であることだと思います。これは後述する各分科の国際性からの要請に応えるものだと言えます。海外交換留学の制度を利用される方が多いのも,これらの特徴の証左と言えるでしょう。
 以下では,各分科と国際日本研究コースについて簡単に紹介します。関心がある分科のさらに詳しい情報については,それぞれのホームページ等を参照していただければと思います。
 超域文化科学分科は,学問領域や地理的境界,文化ジャンルを横断する学際性と総合性を特徴としており,扱う対象は伝統儀礼や民族芸能から社会の高度情報化にともなって変容をつづける芸術や文学,またその根底となる言語活動や思想営為に至るまで実に多彩ですが,いずれにしても,対象に密着しつつ汎く文化の行方を見据える複合的な視点を養います。こうした目的のために,分科はさらに,文化人類学,表象文化論,比較文学比較芸術,現代思想,学際日本文化論,学際言語科学,そして言語態・テクスト文化論という,七つのコースに分かれています。
 地域文化研究分科は,人文・社会科学の手法を総動員して特定の地域や地域間の交流を多角的に学び,地域文化から世界を考察します。分科はさらに,イギリス研究,フランス研究,ドイツ研究,ロシア東欧研究,イタリア地中海研究,北アメリカ研究,ラテンアメリカ研究,アジア・日本研究,そして韓国朝鮮研究という,九つのコースに分かれており,関心がある地域の文化について深く学ぶことができます。地域分科の研究には,地域の言語を習得することが必須ですから,習得した言語で卒業論文の執筆を課すコースもあります。
 総合社会科学分科は,多様化する世の中の様々な問題を,一つの専門分野からの視点のみで理解することは困難であるという問題意識に立脚し,法学,政治学,経済学,統計学,社会学といった社会科学の諸分野を横断し,多様な社会現象を多角的かつ複合的に理解することを目的とする相関社会科学コースと,同じく多様化する国際社会における様々な問題を,国際政治,国際法,国際経済という三つの学問分野を中心に,様々な社会科学の分野の視点も含め多角的に問題を考察し,検証することを通じて,個別の分野だけの視点からは視えてこない知見を得ようとする,国際関係論コースに分かれています。
 国際日本研究コースは,Japan in East Asiaという一つのテーマを持ち,英語だけで卒業できるプログラムの文系コースです。9月に入学する,主に海外の高校を卒業された方々を対象とするコースで,講義,試験,卒業論文等は指導言語も含めて全て英語で行われます。もちろん,4月入学の皆さんもこのコースに進学することができます。
 皆さんの進学選択に少しでもお役に立てば幸いに思います。

(教養学科長/国際社会科学/経済・統計)

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