HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報627号(2021年5月 7日)

教養学部報

第627号 外部公開

〈後期課程案内〉教育学部 教育学部は人生のターニグポイントを提供します

教育学研究科長・教育学部長 小玉重夫

https://www.p.u-tokyo.ac.jp/

立ち上がり始めた十八歳
 二〇二〇年度は新型コロナウイルスの感染拡大で多くの学校活動が制限され、本来するはずだったことができなくなって残念な思いをした人も多かったのではないでしょうか。しかしそうした状況だからこそ、全国の高校生は、学校と社会をめぐる諸問題と正面から向き合い、考え、行動を始めています。私自身、昨年は世界や日本の高校生と議論する場を持ち、子どもや若者が立ち上がり発言し始めていることを実感しています。コロナの感染拡大はこの動きを加速させ、十八歳が社会の中心に位置づく時代になろうとしています。
 こうした動きは、東京大学がこれまで日本と世界で果たしてきた役割にも大きな変化を及ぼそうとしています。近年、「高大接続改革」ということがいわれ、大学=研究の場、高校まで=知識の習得の場という前提が問い直され、高校までの教育が知の探究の場になることによって、大学における研究のあり方を変革していくことが求められようとしています。十八歳選挙権や十八歳成人もそうした背景のなかで位置づけられることができ、教育学部でも、そうした変革を東京大学で駆動する役割を担っていきたいと考えています。


学校を探究の場にしていくimage627_06_1.jpg
 それでは、高校までの教育が知の探究の場になるとは、どのようなことなのでしょうか。たとえば、NHKで、「ここは今から倫理です。」というドラマが先日まで放映されていました。そこでは、高校生たちが直面する、貧困、性差別、暴力等々、かなり難しい問題について、「哲学対話」という手法を取り入れて、知を探究する生徒と教師の様子がダイナミックに描かれていました。この番組ホームページの「スタッフブログ」に、私もコメントを寄稿しているので、ぜひご覧ください(www.nhk.or.jp/drama-blog/7300/443804.html)。               校長時代の筆者が参加した附属中等教育学校での三者協議会の様子
                                (2015年撮影、『2021教育学研究科・教育学部案内』から転載)
 これまでの教育が、正解を導く問題練習の場であったとすれば、探究とは、答えのない問いと向き合うことです。東京大学教育学部には、附属中等教育学校があります。同校では、ディープ・アクティブラーニングを通じた「探究的市民」の育成に取り組んでいます。また、教員・生徒・保護者が一堂に会して話し合いをする「三者協議会」などが多くの教育関係者から注目されています。教育学部の教授が二年おきに同校の校長になり、私も二〇一四年度と一五年度に校長をしましたが、そこにはまさに、前述した「今から倫理です。」で描かれているような、知を探究する生徒と教師が躍動する世界が繰り広げられていました。

架橋する知の拠点
 このように、学校と大学を知の探究の場へと変革していくという点に、東大での教育学部のミッションがあると考えています。教育学部というと、学校の教師を養成する学部であるというイメージを持つ人も多いのではないかと思いますが、東京大学の教育学部は教員養成を目的とした学部ではなく、教育という現象を通じて、学問間の垣根を越えてそれらを架橋し、インクルーシブ教育などにも積極的に取り組み、前述のミッションを果たそうしている学部です。卒業生からは、教育学部での多くの出会いが人生のターニングポイントになった、という声が聞こえてきます。皆さんもぜひ、教育学部で人生のターニングポイントを経験してみませんか。

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インクルーシブ教育の教育・研究交流連携事業に関する協定調印式の様子
(2017年撮影、『2021教育学研究科・教育学部案内』から転載)

(教育学部長/総合教育科学)




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