HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報627号(2021年5月 7日)

教養学部報

第627号 外部公開

第28回身体運動科学シンポジウム ―深代千之教授退職記念― 報告

結城笙子

 二〇二一年一月二三日、身体運動科学研究室・スポーツ先端科学連携研究機構共催の公開シンポジウム「スポーツ動作分析とバイオメカニクスの未来」がオンラインシンポジウムとして開催された。
 第一部は深代千之名誉教授(現、日本女子体育大学学長)による退職記念講演を兼ねた基調講演「バイオメカニクスの魅力と応用」であり、これまで取り組んでこられた研究を逆ダイナミクスからシミュレーションまで幅広く振り返りながら、その魅力を余すことなく紹介された。また、逆ダイナミクス計算によって目標とするべき動作を導くことで、実際の競技場面でのパフォーマンスを向上させた経験を紹介された。
 第二部では、深代先生所縁の五名の研究者が、「スポーツ動作分析とバイオメカニクスの未来」というテーマに沿って研究を紹介された。
 長野明紀氏(立命館大学スポーツ健康科学部・教授)は、「新たな動作解析手法の提案」という題で、画像処理を用いた歩行・走行速度の同定、走行動作中に生じる体幹部の変形の定量化、全天球カメラによる三次元座標の再構成という三つの手法について、開発過程と今後の応用について紹介された。
 佐渡夏紀氏(筑波大学体育系・助教)は「最新の跳ぶ科学:下肢の伸展動作に留まらない巧みな全身動作としての跳躍」と題して、我々ヒトが最大のパフォーマンスを発揮する跳躍様式であるランニングジャンプには、骨盤の挙上由来の位置エネルギーなど、下肢の伸展動作以外の動作が大きく関与することを紹介された。
 飯野要一氏(東京大学大学院総合文化研究科・助教)は、「卓球のフォアハンドストロークにおける動作の再現性を高めるための冗長性の利用」という題で、卓球上級者は中級者と比べてより関節運動の冗長性を利用してラケット面制御の再現性を高めていることを紹介された。
 吉岡伸輔氏(東京大学大学院総合文化研究科/スポーツ先端科学連携研究機構・准教授)は、「トッププロゴルファーのデータから考える動作の再現性」という題で、ゴルフ選手のスイング動作中の姿勢の再現性は必ずしも動作全体で均一ではなく、そのばらつき方にも一定の傾向が存在することを紹介された。
 木下まどか氏(東京大学大学院総合文化研究科・助教)は、「上肢障がいを有するテコンドー選手の蹴り動作遂行における主観と客観」という題で、上肢の有無は実戦的にはガード等に影響を及ぼすが、力学的には前回し蹴り動作の遂行に大きな影響を及ぼさないことを紹介された。
 総合討論では、各発表に関連する専門的な内容から、AI技術のコーチングへの応用可能性といったより一般的な話題まで、非常に多角的な議論が行われた。
 最後に、本シンポジウムに参加された皆様、そしてシンポジウムの運営にご尽力なされた関係者の皆様に深く御礼申し上げ、結びとさせて頂きます。

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(生命環境科学/スポーツ・身体運動)

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