HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報628号(2021年6月 1日)

教養学部報

第628号 外部公開

<時に沿って> 二度あることは 三度ある?

中丸智貴

 この四月に総合文化研究科の助教に着任した中丸智貴です。教員という仕事はこの着任が初めてなのですが、駒場の一年生は人生三度目になります。
 一度目の一年生は遡ること十二年、東大に入学した二〇〇九年です。単に十二年もの時が経ったからか、それとも熱心にキャンパスに通っていなかったからか、原因はどちらか分かりませんが、正直なところ当時の記憶はあまり多くありません。とは言え今に至るまで連絡を取る友人もいるので、人並みに大学生活楽しんでいたと思います。
 二度目の一年生は翌年の二〇一〇年。二年連続で一年生ということには種も仕掛けもありません。ただただ単位不足で進級に失敗した結果です。はっきりとは覚えていないのですが、授業系列ごとの単位数ルールを碌に確認せず履修登録し、蓋を開けてみたら進級条件を満たしていなかったという経緯だったと記憶しています。
 しかし振り返ってみると、その留年こそが三度目の一年生、つまり今へと繋がる道の始まりでした。留年となると多くの人が一年で済ませることに二年かけて取り組むわけなので、二度目の一年生は時間に余裕があります。そこで「何か新しいことを始めてみよう」と手をつけたのがプログラミング。以来すっかりハマってしまい、プログラミング言語・ソフトウェア工学の研究で博士課程まで進み、縁や運に助けられつつ、今再び駒場に戻るに至りました。あの時留年していなかったら、一年生は一度きりだったかもしれません。
 プログラミング言語・ソフトウェア工学の研究と言っても様々あるのですが、自分が取り組んでいるのは「どのような言語設計や支援ツールがあれば手軽にソフトウェア構築できるか考え、自分のアイディアを実装し、実際に役立ちそうか検証してみる」という類の研究です。クールな定理やエレガントな証明はないですが、モノ作りが好きな人は楽しめる世界だと思います。本当は何が楽しいのかについてもっと書きたいのですが、ここに記すには余白が狭すぎたので諦めます。
 最後になりましたが教職員のみなさま、今後色々(特に事務手続で)迷惑をかけることもあると思いますが、着任させていただいたからには留年的失敗がないように頑張っていこうと思っているので何卒よろしくお願いします。そして学生の皆さん、単位はある程度の数があればなんでも良いわけではないようです。友人を作り情報交換をして「進級に必要な単位」をしっかり取るようにしましょう。
※自己紹介ということで「留年したから今がある」というような経験談を書きましたが、決して留年を推奨する意図はありません。留年しないに越したことはないと思います。

(広域システム科学/情報・図形)

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