HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報629号(2021年7月 1日)

教養学部報

第629号 外部公開

<時に沿って> 広い学問の 世界への玄関口

永田賢司

 教養学部の皆様、はじめまして。この度、助教として着任いたしました永田賢司(ながたけんじ)と申します。東日本大震災があった二〇一一年の春に、私はこの東京大学駒場キャンパスに新入生として足を踏み入れました。それから丁度十年が経った二〇二一年の春、縁があり今度は教員として東京大学にお世話になることとなりました。多くの経験や学びを与えてくださった東京大学にこうした形で恩返しができることを大変うれしく思います。
 理科二類の新入生として教養学部に足を踏み入れた当初の私は、農学部に進学して獣医師になることを夢見ていました。しかし、単位取得のため何の気なしに受けた「光合成の科学」という全学ゼミナールの講義が、私の進路を大きく変えることになりました。この講義で次々と登壇する先生方が語る植物の生き様は、非常に美しく合理的なもので、すっかり私は植物という生き物の虜となってしまったのです。その後私は、理学部生物学科へと進路を変え植物の研究という新たな世界に飛び込むこととなりました。
 教養学部の講義は様々な分野において第一線で活躍なされている先生方による講義で、その懐は人の物の見方をガラリと変えてしまえるほど深いものです。ぜひ在学生の皆様も学部のリベラルアーツ教育を存分に活用し、広大な学問の世界から自分の真の興味を見つけていただきたいと思います。
 さて、そんな教養学部の教員の一員となる私の専門はといえば、「植物分子遺伝学」という分野になります。簡単に言えば、「植物の個々の細胞が特定の機能を持つ特殊な細胞へと変化する際、何を目印に変化の方向性を決めているだろうか?」という疑問に対して、鍵となる遺伝子を見つけてその遺伝子のはたらき方を調べるというようなものです。もちろん、私と関りを持った皆さんが私の研究に触れて、「植物って面白いな」と少しでも思っていただける(そして一緒に研究ができる)と嬉しいですが、そうでなくとも、皆さんが何か自分の殻を一つ破って新たな世界を知るお手伝いができれば、と思っております。皆様、何卒よろしくお願いいたします。

(生命環境科学/生物)

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