HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報630号(2021年10月 1日)

教養学部報

第630号 外部公開

<時に沿って> 興味の赴くままに

神野莉衣奈

 初めまして。二〇二一年六月一日付で、総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系の助教に着任しました、神野 莉衣奈と申します。東京大学への所属も教員となるのも今回が初めてですが、少しでも貢献できるよう精進してまいります。
 私は京都の片田舎で生まれ育ち、京都大学の電気電子工学科に入学後、大学院で電子工学を専攻し博士(工学)の学位を取得しました。博士課程時は、約一年間アメリカのコーネル大学に滞在して研究を行い、他にも多くの国内外の会議に参加する機会にも恵まれました。人々と直接会う機会が減った今、とても贅沢で貴重な経験をしていたのだと改めて感じます。学位取得後は、一年と少し筑波大学でポスドク研究員をし、東京大学の教員となりました。
 私の専門は半導体工学です。半導体は高校物理でほとんど取り上げられないということもあり、「名前は知っているけど何かよくわからない」とよく言われます。半導体には様々な機能があり、身近にある照明やライトに用いられているLEDは半導体の発光特性を用いています。発光波長(色)は半導体材料に依存し、ナノレベルでの構造制御によりLEDが作製されています。他にも、身の回りの電子機器の中の見えない部分にもたくさん半導体が使用されており、スマホやPC、家電、車載などを通して気づかないうちに日々半導体の恩恵を受けています。ポスト5G社会でのさらなる大容量高速通信にもチップの集積化や高周波デバイスといった半導体技術の開発が重要となります。
 現在は半導体の研究に従事していますが、もともとはギターの音を変調するエフェクターを作りたいと思い、電気電子工学を専攻しました。さらに遡ると高校の途中までは長い間薬学部を志望していました。大学へ進学すると、電気回路よりも半導体工学の授業が面白く、他にも生体医工学など他の分野にどんどん興味が移っていきました。学部四年生で半導体の研究室に配属されてからはミクロ・ナノスケールを人工的に制御できることに感動し、気づけばそのまま研究者の道を歩み始めていました。大学に入るまで半導体について全くの無知でしたし、研究者、そして大学教員になるとは予想していませんでしたが、偶然の重なりや多くの方々の導きがあり現在に至ります。東京大学には教養学部があり、第一線で活躍されている先生方から様々な学問に触れることができます。こういった環境で過ごしていればまた違った人生を選んでいたかもしれないと、東京大学へ着任して感じました。在学生の皆様には、この環境を存分に生かして、教養を身につけ視野を広げ、その中から自身の道を切り開いていただきたいと思います。

(相関基礎科学/物理)

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