HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報631号(2021年11月 1日)

教養学部報

第631号 外部公開

全学運動施設スマート化構想

中澤公孝

 本年七月六日、東京大学スポーツ先端科学連携研究機構(UTSSI)と株式会社丸和運輸機関は同社ラグビー部強化に向けた共同研究契約を締結し、同社より寄附される柏キャンパスラグビーグラウンドとクラブハウスの寄贈式を安田講堂で行なった。UTSSI側はラグビーグラウンドに中村仁彦先生らが開発した最新の動作解析システムを導入するなど、これら施設のスマート化と研究フィールド化を進める予定である。この動きは、全学の運動施設に東京大学が有する先端的なセンシング技術を導入し、いわゆるスマート化を図ろうとの構想、通称、全学運動施設センシングフィールド化構想の中に位置付けられる。柏のラグビー施設設置は実質的にいち早くその口火を切った事業といえる。センシングフィールド構想の名称はUTSSI事務局はじめ関係者間で議論を重ね、藤井総長のUTokyo Compassの中に明確に位置づける意味で、diversity, inclusionの方向性に沿うことが分かる名称に変更しようということになり、議論の結果、FUSIONプロジェクトとの名称を用いることとなった。FUSIONはFUture Sports Inno­vatiONから作成した造語であり、「多様なものが混ざって一つになる」というまさにdiversity, inclusionの理念に通ずる意味が込められている。今後は、例えば、柏Fusionラグビーフィールド、駒場Fusionラボ、本郷FusionジムなどのようにFUSIONの語を用いる予定である。
 FUSIONプロジェクトが実現すれば、全学の運動施設に東京大学の研究者が開発した先端技術を中心として、様々な計測用センサーを配置するとともに、通信環境の整備によって個別施設からのデータを集約し、利用者の生理生体情報を始めとする様々なビックデータを統合して解析処理することができるようになる。それらは利用者の心身状態の把握を通じて、健康管理、運動部員の障害予防とパフォーマンスアップ、トレーニング、体育授業での利用、など様々な用途に応用可能である。そして開発されるシステムは、病院、高齢者福祉施設、企業、学校、一般家庭など多くの社会フィールドへの還元が期待できる。昨年来のコロナ禍は、心身を最適な状態に保つことの重要性と困難さを図らずも広く知らしめることとなった。FUSIONプロジェクトは、東京大学の学生や全ての構成員の心と身体の状態を最適化することを目指すものであり、その先にはあらゆる人々を対象として社会還元するとの最終ゴールがある。UTSSIとして全力を上げて取り組んでいる所以である。

(東京大学スポーツ先端科学 連携研究機構機構長/生命環境科学/スポーツ・身体運動)

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