HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報631号(2021年11月 1日)

教養学部報

第631号 外部公開

「エネルギー総合学連携研究機構」発足について

瀬川浩司

 二〇二一年七月一日、学内10部局が連携し、文理融合による新たな学理として「エネルギー総合学」を創成するとともに、この学理を実践して社会に貢献する人材の育成を目指した「エネルギー総合学連携研究機構」(機構長:松橋隆治 東京大学 大学院工学系研究科 教授)をスタートさせました。本研究科から、国際環境学教育機構の前田章教授、苷蔗寂樹准教授、成田大樹准教授、教養教育高度化機構環境エネルギー科学特別部門長/広域科学専攻教授の瀬川浩司が参画しています。
 「エネルギー総合学連携研究機構」は、エネルギーの生産、輸送から変換、利用に至るまでのトータルエネルギーシステムを網羅し、エネルギー関連技術の研究開発から、エネルギー政策、制度の設計に至るまでの広範な分野に関する分析、総合化、社会実装を扱うエネルギーの総合学を確立し、安心安全で豊かな社会を支える環境負荷の低いエネルギーシステムの実現に貢献します。このため、本機構では、技術開発とともに、政策やエネルギーシステムを総合的に検討するため文理融合による「エネルギー総合学」を創成し、学理を実践し社会実装することを目指します。
 本機構のミッションは、研究開発、教育、社会連携の三つの要素に大別できます。研究開発ではエネルギー分野の新たな価値創造に挑む学術の戦略的展開に対して、卓越した研究者が集い、社会におけるエネルギーの諸問題や気候変動に関する対応策を企画、開発する組織として価値創造を進めます。また教育では現状の社会課題を抽出・分析すると共に、望ましい未来社会をデザインします。その未来ビジョンから技術的課題をバックキャストする思考法を涵養すると共にエネルギー総合学の学理を創成し、人材を育成します。更に社会連携ではエネルギーに関する社会からの強い要請に応え、文理融合による革新的で実践的な研究を実現すると共に、学産官の連携により成果の社会実装を可能にする強力なプラットフォームを形成します。
 二〇五〇年までにカーボンニュートラル社会の実現を目指すためには、地球環境の安定性と自主回復性を保ちつつ、インクルーシブで持続的な未来社会をデザインし、そこからのバックキャストにより、現在どのような社会実装を進めるべきか検討を開始しなければなりません。その際に鍵となるのは、政策・制度の革新であり、この政策・制度の革新と、エネルギー技術の革新の相乗作用により、環境と経済の両立を図る必要があります。ここにデジタル転換とグリーン転換の最新の知見を加味することにより、安心安全で豊かなカーボンニュートラル社会の実現が可能となります。本機構では、エネルギー諸問題を解決するために、技術開発ばかりでなく、政策や社会システムを総合的に検討するため文理融合による新たな学理=エネルギー総合学を創成し、学理を実践し社会に貢献することを目指します。
 本学の関係部局として工学系研究科、新領域創成科学研究科、生産技術研究所、先端科学技術研究センター、情報理工学系研究科、農学生命科学研究科、理学系研究科、総合文化研究科、未来ビジョン研究センター、公共政策学連携研究部等が有機的に連携しながら検討します。今後、益々関係部局、構成人員を増やしつつ、発展させていく予定です。また、学外の機関として、産業技術の幅広い分野におけるさまざまな技術開発を総合的に行っている産業技術総合研究所、物質・材料科学を牽引する国際的な中核機関である物質・材料研究機構、日本で唯一の自然科学の総合研究機関である理化学研究所と連携し、研究開発能力を結集して課題を解決します。さらに、多くの企業とも共同研究、社会連携講座や寄附講座等による産学連携を進め、政府研究開発プロジェクト等に積極的に提案し、国、自治体とともにゴールを目指します。発足記念シンポジウムは十月二十八日に開催されました。

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(広域システム科学/化学/教養教育高度化機構環境エネルギー科学特別部門)

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