HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報635号(2022年4月 1日)

教養学部報

第635号 外部公開

コマメシノスヽメ

田村 隆

 昨年十二月十三日、一年八か月余りにわたって続いたキャンパスの入構制限が緩和され、全ての門が開いた。コマメシへのアクセスもよくなったが、特に複数人での食事の際は、お互いの感染予防に引き続き十分御留意いただきたい。
 以下、昨春の小欄を補訂して御案内する。学生、卒業生の指摘で加えた店もある。なお、短縮営業などの可能性もあるので、営業日と時間の確認をお願いしたい。
 まずは王道の「学食」、生協食堂から。一階「Cafe teria若葉」(一食)と二階「Dining銀杏」(二食)。私も普段の昼はほぼこのどちらかで、『逆評定』にも目撃情報を書かれたことがあるが、二限が終わると一気に混雑するのでなるべく十二時台は避けたいところ。SuicaやPASMOに付ける電子マネーの「学食パス」を利用すれば、月ごとの利用状況と栄養バランスが記録される。玄米オムライスやコンボ(アラカルト四品)、夏の冷やし担々麺、冬のほうとう風うどんを薦めたい。前回紹介した駒場丼は残念ながら今はメニューにないらしい。二〇一八年には『東京大学駒場キャンパス 一食全メニュー総覧』という同人誌が編まれ、翌年二食の情報も追加された(書籍部にも並んでいた)。購買部では食堂内製の温かい「学食BENTO」、定期試験期間には「単位」の焼印入りの「単位パン」も話題に。ドラえもんの「アンキパン」を懐かしく思い出す。食堂の隣にはイタトマ系列の「Caffé VIGORE」(ヴィゴーレ)があり、パスタランチのほか、窓からの桜や新緑の眺めがよく喫茶にも最適。21KOMCEE West地下の「KOMOREBI」ではたっぷり注がれたコーヒーをテイクアウトできる。
 「杯を上げよ」という意味のフランス語が店名の「Lever son Verre」(ルヴェソンヴェール)は、昼は千百円でフレンチを楽しめる。日替わりの肉料理・魚料理もしくは南仏野菜のトマト煮(Table For Two)から選び、パン・サラダビュッフェと食後のコーヒーもしくは紅茶が付く。東大駒場友の会の会員には飲み物のお替わりをサービス。二階の店名「橄欖」(かんらん)はオリーブの訳語。教養学部前身の旧制一高の校章はオリーブと柏葉だった。一階よりもフォーマルな空間で、『恒河沙』二〇八号(二〇一九年四月)の「駒場ミシュラン」でも「優上」評価。
 三昧堂の前を通って西門を出る。駒場Ⅱキャンパスの時計台横の生協食堂はかつて国産旅客機YS─11の設計室だったという歴史的建物。堀越二郎達も出入りしていたのだろう。オーガニックレストラン「ape cucina naturale」(アーペ)や隣の「Bio Café ape」、日替わりのキッチンカー「駒場東大RCAST村」もキャンパス内。周辺にも正門隣の「東京和茶房」や向かい側の「林檎の樹」、「白系スパゲッティ」などがある。駒場公園の奥にある日本近代文学館内の「BUNDAN」は本に囲まれたカフェで、メニューには文豪の名が付く。コーヒーのモカは「寺山TERAYAMA」。由来は教科書でお馴染みのあの短歌のはず。
 次に駅西口側へ。蕎麦屋門の愛称を持つ坂下門を出てすぐの蕎麦処「満留賀」(まるか)は一昨年閉店してしばらく空き店舗になっていたが、この二月に人気のベーカリー「Le Ressort」(ルルソール)が坂の上から移転して新店舗がオープンした。建物の二階は、お好み焼きともんじゃ焼きの「楓」。駅近くには、半地下にあるカレーの「LUCY」、大きなチキンカツの「Oaks」(オークス)、たい焼きの「雅にぃ」も。
 駒場小学校側の坂の途中にある喫茶店の「DORA」では、各所に並んだ市松人形の視線を感じながらのコーヒーと読書もよいし、ポークジンジャーなどのランチもある。「COLORADO」はドトール系列でモーニングもあり。イタリア料理店「MARUMOREO」は二階に「鍼灸院ヒカルハウス」が併設される。
 駅西口に戻って今度は淡島通りに出る坂を上ってゆくと、右手にあるのが「GRATBROWN Roast and Bake」。本格的なコーヒーが味わえる。少し先の「Una pesca bianca」(ペスカビアンカ)は生牡蠣が名物だが、ランチメニューもある。淡島通りの菓子処「さか昭」の桜餅(長命寺)は、西日本出身の新入生は驚くかもしれない。
 一方、東の梅林門を出て階段を下りると東大前商店街へ。「菱田屋」はテレビや雑誌でも取り上げられる人気店で行列必至。『菱田屋の男メシ!』(二〇一七年)というレシピ本まである。昨年七月には「英香」跡に「菱田屋酒場」が開店した(お酒は二十歳になってから)。「キッチン南海」の黒いカツカレーも名物。ネパールカレーの「MUSKAN」に、近くの「STAN」はサンドイッチストア。ここ二年はオンライン開催だったが、私の所属する比較文学比較文化コースでは「角屋」のミックスサンドで秋にサンドイッチパーティーが開かれる。「TOKYO PASTA WORKS」ではその「角屋」の店員さんお墨付きの生パスタを。「みしま」では、熱々のたこ焼きのほか、珍しいカレーもんじゃをお薦めしたい。一九四九年創業(教養学部と同い年)という「太田屋」は、精肉店の弁当だけあって、ミートボールと揚げたての唐揚げが人気。「LISBLANC」(リスブラン)の跡には、韓国料理の「박식당」(パクシクタン)が昨年八月にオープンした。スイーツでは、「IL BIGNÈ」(イルビニエ)のシュークリームはクリームと皮が分かれていてサクサク感が特長。隣はティラミス専門店の「Tiramisu Home Made」。
 体育館側の裏門を出た界隈では麺類が思い浮かぶ。蕎麦の「絆」は天ぷらとごはんの付いたランチメニューがお得。一昨年、門のそばに移った「山手」は、ゆきラーメンが名物。隣には弁当の「たけ」がある。
 野球場の土手の桜並木を通って北門を出る。今の季節は桜とアマナが美しい。出てすぐの三叉路は今日のランチの分かれ道。三田用水の暗渠にほぼ沿ったコスモス(航研)通りを左に少し歩くと山小屋風の「フレッシュネスバーガー」一号店が見える。ホームページにも「はじまりは駒場の小さな店舗から」とあり、木造一戸建ての店舗は元は劇団の稽古場だったという。さらに進むと、生ハムとチーズなどイタリア食材の「PIATTI」(ピアッティ)や二郎系ラーメンの「千里眼」がある。夏季限定の冷やし中華も人気。逆に門から右方向に歩けば、サンドイッチやフルーツミックスアサイー(スムージー)の「BONDI」が見えてくる。神保町のカレーは「ボンディ」(BONDY)だが、富ヶ谷のこちらは「ボンダイ」。門に戻り、通りを渡ってすぐのところにはアコウダイなどの焼魚定食がお薦めの「うしお」、そのまま進むとフレンチの「Chambre Avec Vue」(シャンブルアヴェクヴ)がある。「岬屋」の夏の水羊羹と秋の栗蒸羊羹(竹栗蒸)も名品。渋谷富ヶ谷二郵便局の先の「むぎ」では豊洲の美味しい魚を楽しめる。メニューは日替わりだが、冬にナメタガレイの煮つけがあったら是非召し上がれ。

image635_7_02.png

(超域文化科学/国文・漢文学)

第635号一覧へ戻る  教養学部報TOPへ戻る

無断での転載、転用、複写を禁じます。

総合情報