HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報635号(2022年4月 1日)

教養学部報

第635号 外部公開

辞典案内 2022 漢和辞典

田口一郎

 漢和辞典は、(1)主に漢文(中国古典詩文)を読むのに適したもの、(2)主に日本語の中の漢字・漢語を調べるのに適したもの、に大きく分けられる。
 まず(1)から。①『全訳漢辞海』(三省堂、第4版2016年、3000円。小型版2800円。iOS対応App 3060円)は、語法分析や品詞別の語義解釈に特色があり、用例・付録も充実し、このカテゴリーで支配的。①以前に研究者必携であった②『新字源』(角川書店、3000円)は、2017年に改訂新版となり、捲土重来を期す。用例を踏まえての語義説明や語法説明では①が優れ、②は伝統的な古典籍の熟語・説明に強い。③『支那文を読むための漢字典』(研文出版、第9版1999年、3000円)は、読解に役に立つ字書、①②の補完に。小型の辞典で解決できない問題は図書館等で④『大漢和辞典』(大修館書店、修訂第2版2000年、240000円。学内ネットワークからオンライン版〔JapanKnowledge Lib〕が利用可)に当たるとよいが、完璧な辞書などなく、『大漢和』にこうある、と権威づけに使うと痛い目に遭う。漢文マニアの方は、漢和から「漢漢」に進まれては。中国最大の辞典⑤『漢語大詞典』(上海辞書出版社、各版)がよく使われるが、お薦めは⑥『辞源』(商務印書館、修訂第三版。USB版もあり)。中国最古の辞書が修訂を重ねたもので信頼性抜群、歴史の厚みが感じられる。
 (2)としては電子辞書・アプリ化もされている⑦『漢字源』(学習研究社、改訂第6版2018年、3000円)、⑧『新漢語林』(大修館書店、第2版2011年、2900円)が何かと便利。⑦は収録字数が約17,000字と小型辞典で最も多く、書道愛好家にお薦め。日本語における漢字語を調べるなら、なにより⑨『日本国語大辞典(第二版)』(国語辞典の項参照)が効率的だが、近代文献から用例を集めた⑩『新潮日本語漢字辞典』(新潮社、2007年、9500円)にも意外な発見がある。
 漢字自体への更なる興味を満たすには、白川静氏の⑪『新訂 字統』(平凡社、普及版2007年、6000円)・⑫『字通』(平凡社、普及版2014年、10000円)、⑬『学研新漢和大字典』(藤堂明保他編、学習研究社、普及版2005年、8800円)等があるが、定説とはいえない内容も含まれるので注意。中国語ができれば⑭『漢語大字典』(四川辞書出版社、第2版2010年。縮印版2018年)が目下最も信頼できる。

(超域文化科学/国文・漢文学)

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