HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報636号(2022年5月 9日)

教養学部報

第636号 外部公開

〈後期課程案内〉医学部 国民の健康増進と科学の進歩を目指して

医学系副研究科長・副医学部長 南学正臣

https://www.m.u-tokyo.ac.jp/

 新入生の皆さん、ご入学おめでとう。私自身、東京大学に入学したことを昨日のように思い出すことが出来ますが、それからもう四十年も経ったことが信じられません。しかしながら、皆さんはCOVID─19のpande­micによる非常に特殊な状況で受験をし、入学されました。COVID─19のpandemicは、予想も出来なかった大きな変化をもたらしましたが、これらの経験は皆さんにとってかけがえのない財産になっていると思います。
 COVID─19のpandemicは、医学と科学研究の重要性を我々に強く認識させました。二〇一九年十二月に報告された新しい病気の原因が、二〇二〇年一月には明らかにされ、あっという間にそのウイルスの遺伝子配列が全世界の科学者に共有され、一年でワクチンが開発されました。このことは、現在の科学が如何に優れているか、また国際的な情報共有と協力が如何に重要であるかを示しています。もちろん、全世界での臨床に携わる医療関係者の献身については、言うまでもありません。
 医学部の目標は生命科学・医学・医療の発展に寄与する人材を育成することです。医学部は、生命科学研究において世界をリード出来る研究者を輩出し、医療の最前線で活躍し多くの命を救う医師を育て、更に社会医学や健康科学の分野に大きく貢献する人材を育成しています。このような多様な人材が将来全人的医療を実践し、あるいは創造的な研究を行い、国民の健康増進と科学の進歩に寄与することが、我々の夢です。
 医学部には医学科と健康総合科学科があります。医学科ではヒトの生物学、病気の発症機序、診断・治療の原理と応用について学び、医師免許を取得後に基礎医学、社会医学、臨床医学といった領域で国際的に活躍できる人材を養成しています。健康総合科学科では、健康の維持と病気の予防、社会や環境と疾患の関係性、介護や看護の科学など、多様な健康に関連する科学を学びます。
 医学科では医師養成のための職業教育という観点も重要ですので、多くの科目が必修科目であり実習が多く取り入れられています。そのため、教養学部時代にリベラルアーツをしっかりと学ぶことは一層重要です。医学部に進学後はまず基礎医学や社会医学を学び、その後に臨床医学を学びます。特に医学研究を志す学生にはPhD・MDコースやMD研究者育成プログラムなどが用意されています。臨床医学の教育では参加型の臨床実習が重要なカリキュラムです。
 健康総合科学科のカリキュラムは幅広い内容に対応しており、三年次に希望専修の科目の履修が開始されます。健康総合科学科には「環境生命科学」「公共健康科学」「看護科学」の三つの専修があり、それぞれが異なった領域をカバーしています。学科名が示す様に、本学科では人々の生活にとって重要な構成要素である健康を学科全体の柱としています。人の誕生、成長・成熟、老化というプロセス全体において幸福の向上を実現する科学が健康総合科学であり、そのためには人間の個別性・多様性、社会背景・社会規範などへの配慮、社会への貢献の意識が重要です。
 医学部の卒業生の進路は、実は多様です。健康科学科の卒業生は、健康に関連したアカデミア、企業、公的機関など、多様な分野で活躍しています。医学科の卒業生も、臨床医、医学研究者から、行政、起業まで、様々な進路を取っています。また、それらの進路は相互に交差し、途中で活躍の分野が変わる人たちもいます。このため、医学部に進学する学生には、医学部の持つ多様な教育や研究のリソースを活用して主体的な学修を行うとともに、学部生の間も学問と社会の関わりを意識した学修を心掛けることを期待しています。東京大学の構成員には、その優れた能力を活かし、どの分野においても世界をリードする使命があります。多くの学生が医学に興味を持ち、nobles obligeの精神を忘れず、人類の福祉に大きく貢献してくれることを願っています。

(副研究科長・副学部長/内科学)

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