HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報636号(2022年5月 9日)

教養学部報

第636号 外部公開

〈後期課程案内〉農学部 農学部への誘い

副学部長 石井正治

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/

 農学部という言葉の中にある【農】は、どのように解釈できるでしょうか?私の答えは、『農は人なり』です。人は、産まれてから死ぬまで、食し続けること、行動し続けること、そして考え創造し続けることで、他の人も含めた外界との接点を持ち続けます。この、人と外界との接点全てが農の領域であると、私は考えています。さらに進めて言えば、人が見えなくなると、その領域は農を離れていくのだろうと感じています。人在るところ農在り、人無きところ農も無し、つまり、『農は人なり』です。
 とは言うものの、これではあまりに抽象的ですので、学問としての農学を、再び私の言葉で定義しておきましょう。【農学とは、衣食住を主たる対象として、人の良き営みを発展させたり新たに創造することに関わる総合科学である】です。実際、農学部には多くの学問分野が存在していて、農学部自体が総合大学とも言える活況を呈しています。『農学部では、こうした事柄も研究されているのか!』と、その実情に驚かれる諸君も居ることと思いますが、上の定義に当てはめて考えれば、納得できることでしょう。
 さて、農学は農業と深い関係にあるものの、両者はイコールの関係ではありません。私は、農業は農学の一部である、と考えています。『農学が農業を含んでいると考えるのは変だ。何故なら農業は古い歴史を刻んでいるが、農学はそれよりも新しい学問分野だから!』と思われる諸君が居るかもしれません。しかし、後年の論理体系がそれ以前の事物を内包することはしばしば見られることと思います。
 農学部では諸々の人の営みを科学しています。少し中身を見てみましょう。なお農学部では、課程専修制により農学を体系化しています。
 課程は3課程から成っています。⑴応用生命科学課程では、生命科学を基礎と応用の両面から総合的に学ぶことを特徴としています。⑵環境資源科学課程では、自然・生物・生活環境の保全と創造を地球と地域レベルで実現しながら、21世紀の食糧・資源・地域開発のグローバルデザインを描くことを特徴としています。さらに⑶獣医学課程では、動物の医学および高等動物の比較生物学の深化を特徴としています。
 専修(学科に相当するものと考えてください)を挙げますと、⑴には6専修(生命化学・工学、応用生物学、森林生物科学、水圏生物科学、動物生命システム科学、生物素材化学)が、⑵には7専修(緑地環境学、森林環境資源科学、木質構造科学、生物·環境工学、農業・資源経済学、フィールド科学、国際開発農学)が、さらに⑶には獣医学専修が属しています。専修についての詳しい説明は、是非、農学部HPから確認してくださいね。
 いや、私はもっともっと実学寄りのことを学びたい!という諸君には、実学としての農学の原点に立ち返り諸々の課題に取り組むOne Earth Guardians(地球医)、をうみだすための新しい教育プログラム、地球医学=One Earthologyが用意されています。このプログラムは、皆さんが農学部に進学しどの専修に属することになっても、履修することができます。
 農学部は今、脱皮を図っています。農学部は、【農学を構成する応用諸科学に関する専門教育を段階的・体系的に行い、食料・資源・環境等の問題の解決に必要な高度の専門知識と幅広い視野を有し、社会・文化・産業活動を通じて地球社会の要請に応えることのできる洞察力・実践力・指導力を備えた人材を育成することを目的としています(HPより一部改変)】。時代が移ったとしても、人材育成なる農学部のミッションは変わりませんが、農学を構成する応用諸科学には流動性がついて回ります。私たちはこれまでの農学を諸君に伝えることに加えて、諸君とともに新たな農学を創造していきたいと強く願っています。そのためにはある程度の流動性を有した組織作りが必須です。しかし、歴史の中で確立された組織には、機能性もシッカリと備わっているために、大鉈をふるってスクラップアンドビルドなどしようものなら農学部全体が壊れてしまいます。さて、どうしたものでしょう?現在、農学部愛に溢れた教職員が寄り添いながら、改革を進めている途上です。しかし、教職員だけでは創造力等が圧倒的に不足しています。そこで、明日の農学を背負ってくれる、この文書を読んでくれている諸君にも、是非とも参画していただきたいと願っています。
 そして、人の営みを学問的に支える農学部が東京大学の顔となるように、さらに、東大農学部が世界の農学の中心となっていくように、将来の農学部構成員である諸君と、私たち現農学部構成員との叡智を結集し、創造的創発的に発展し続ける農学部へと脱皮できるよう、奮闘してまいりましょう!
 どうです?農は人なりを基盤として、人のより良き営みを目指しながら、明日の科学を共に創造していきませんか!
 農学部は、熱き諸君の参画を心待ちにしています!

(副学部長/応用生命工学)

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