HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報639号(2022年10月 3日)

教養学部報

第639号 外部公開

<時に沿って> やりたいことができる幸せ

季高駿士

image639_4-3.jpg 二〇二二年五月に総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系の助教に着任いたしました、季高駿士(すえたかしゅんじ)と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私は統合自然科学科の出身であり、学生時代にお世話になった先生方と一緒に教鞭をとることができ、恐悦至極に存じます。学部時代はもともと数学や物理、生命科学など様々な分野に興味がありましたので、進学選択の際にどの学部に進むか悩みましたが、一つの分野に限定せず多くを履修できる統合自然科学科に進学しました。数理自然科学コースに所属していましたが、物理学や生命科学の講義なども履修しました。それと同時に、小さい頃から教師になることが夢でしたので、教員免許も取得することにしました。いろいろと欲張ってしまったため毎日講義やレポートに追われていましたが、なんとか無事卒業して教員免許を取得できました。学部を卒業した後は教師を目指すか研究を続けるか少し迷いましたが、大学院に進んで研究を続けることにしました。そして二〇二二年三月に博士の学位を取得し、一ヶ月ほどポスドク研究員を経たのち、現職に着任することになりました。かれこれ十年近くを駒場キャンパスで過ごしていることになります。十年もの長い年月をずっと駒場で過ごしたと聞くと自分でもびっくりですが、振り返ってみるとあっという間だった気もします。
 私の専門は生物物理学で、特にタンパク質工学の研究を行っております。タンパク質は私たちの体の中で重要な役割を担っている一方、ウイルス感染やガンなどの深刻な疾患にも深く関与しています。特に、タンパク質同士の相互作用は新しい創薬ターゲットとして注目されております。この相互作用は従来の低分子化合物による阻害が難しいことから、近年、抗体をはじめとしたバイオ医薬品の開発が進んでおり、有用なタンパク質を設計できれば新薬開発に貢献できると期待されています。私が所属する研究室では、産業や医療に役立つようなタンパク質の理論的な設計と、実験による検証の両方を行っています。まさに、学部時代に学んだ物理学と生命科学の両方を活かした研究となっています。最近では計算機を用いて自然界に存在しない新規タンパク質をゼロから設計したり、深層学習を用いてタンパク質の立体構造を高精度で予測したりすることなどが可能になってきており、タンパク質研究の分野は今後ますます発展していくと考えられます。私も新しい知識や技術を積極的に取り入れて、研究に励んでいきたいと思います。
 これまで進路選択など悩むことは何回かありましたが、大体は当時の自分の直観に従って選択してきました。その時その時の選択が今になって少しずつ繋がってきているように思います。結果的にやりたい研究ができ、教員になることができたのは非常に恵まれていると強く感じております。教育を通して私自身も学ぶべきことが多いと思いますので、学生と一緒に学ぶ姿勢を持ち続けたいと考えております。研究者としても教員としてもまだまだ未熟者ではございますが、精進してまいりますのでご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

(生命環境科学/物理)

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