HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報644号(2023年4月 3日)

教養学部報

第644号 外部公開

コマメシの栞

田村 隆

 この一年は前年に比べて「どこそこの店は知っているか」と新しい情報を寄せていただくことが多かった。対面に戻った授業や打ち合わせの合間にする立ち話のありがたみを感じる。教示もふまえて補訂を試みた。毎度のお願いとなるが、特に複数人での食事の際は、お互いの感染予防に引き続き十分御留意いただきたい。また、短縮営業などの可能性もあるので、営業日と時間の確認も併せてお願いしたい。
 まずは王道の「学食」、生協食堂から。一階「Cafe­teria若葉」(一食)と二階「Dining銀杏」(二食)。私も普段の昼はほぼこのどちらかで、『逆評定』にも目撃情報を書かれたことがあるが、二限が終わると一気に混雑する。昨年四月には銀杏並木の一号館売店辺りまで行列が伸びていた。二階の玄米オムライス、一階の冷やし担々麺を薦めたい。二〇一八年には『東京大学駒場キャンパス 一食全メニュー総覧』という同人誌が編まれ、翌年二食の情報も追加された。昨年九月からはスマホ決済アプリ「学食マネー」が導入された。食堂の隣にはイタトマ系列の「Caffé VIGORE」(ヴィゴーレ)があり、パスタランチのほか、実はモーニングも充実している。21KOMCEE West地下の「KOMOREBI」ではたっぷり注がれたコーヒーをテイクアウトできる。昨年七月には食堂の混雑緩和のため、キャンパス内の二箇所にキッチンカーが導入された。曜日によってメニューが異なるので、正門前の案内板でチェックしよう。
 「杯を上げよ」という意味のフランス語が店名の「Lever son Verre」(ルヴェソンヴェール)は、昼夜ともに千円台からフレンチを楽しめる。ランチは日替わりの肉料理・魚料理もしくは南仏野菜のトマト煮(Table For Two)から選び、パン・サラダビュッフェと食後のコーヒーもしくは紅茶が付く。東大駒場友の会の会員には飲み物のお替わりをサービス。二階の店名「橄欖」(かんらん)はオリーブの訳語。教養学部前身の旧制一高の校章はオリーブと柏葉だった。一階よりもフォーマルな空間で、『恒河沙』二二〇号(二〇二二年四月)の「駒場ミシュランガイド」でも「優上」評価。
 三昧堂の前を通って西門を出る。駒場Ⅱキャンパスの時計台横の生協食堂はかつて国産旅客機YS─11の設計室だったという歴史的建物。堀越二郎達も出入りしていたのだろう。朝ドラの「舞いあがれ!」でもYS─11が離陸するシーンがあった。オーガニックレストラン「ape cucina naturale」(アーペ)や隣の「Bio Café ape」、キッチンカー「駒場東大RCAST村」、加えて昨年十月には「食堂コマニ」がオープンした。食材にこだわったおむすび定食やすごい鯖定食などのメニューで、ロゴとキャラクターデザインは画家佐藤真生氏によるもの。正門隣の「東京和茶房」は昨年末に閉店、ほうじ茶のDEEP ROASTのコクは忘れがたい。正門向かい側には日替わり定食のある喫茶店「林檎の樹」。駒場公園の奥にある日本近代文学館内の「BUNDAN」は本に囲まれたカフェで、メニューには文豪の名が付く。コーヒーのモカは「寺山TERAYAMA」。由来は教科書でお馴染みのあの短歌のはず。
 次に駅西口側へ。坂下門の愛称蕎麦屋門は閉店した蕎麦処「満留賀」(まるか)によるが、その跡に人気のベーカリー「Le Ressort」(ル・ルソール)がある。建物の二階は、お好み焼きともんじゃ焼きの「楓」。駅近くには、半地下にあるカレーの「LUCY」、大きなチキンカツの「Oaks」(オークス)、たい焼きの「雅にぃ」も。カタカナ表記の看板が珍しい「マクドナルド」駒場東大前店は今年一月末で閉店した。
 駒場小学校側の坂の途中にある喫茶店の「DORA」では、各所に並んだ市松人形の視線を感じながらのコーヒーと読書もよいし、ポークジンジャーなどのランチもある。「COLORADO」はドトール系列でモーニングあり。イタリア料理店「MARUMOREO」は二階に「鍼灸院ヒカルハウス」が併設される。坂の上には「うつわとカフェLim.」。
 駅西口に戻って今度は淡島通りに出る坂を上ってゆくと、右手にあるのが「GRAT­BROWN Roast and Bake」。本格的なコーヒーが味わえる。少し先の「Una pesca bianca」(ペスカビアンカ)は生牡蠣が名物だが、ランチメニューもある。淡島通りの「福島屋」のカレー南蛮はとろみが強めで温まる。菓子処「さか昭」の桜餅(長命寺)は、西日本出身の新入生は驚くかもしれない。
 一方、東の梅林門を出て階段を下りると東大前商店街へ。たこ焼きの「みしま」が昨年十一月末をもって閉店した。最後に訪れた折には、閉店を惜しんで遠路食べに来ていた卒業生に偶然会って話せた。「菱田屋」はテレビや雑誌でも取り上げられる人気店で行列必至。『菱田屋の男メシ!』(二〇一七年)というレシピ本まである。近くには姉妹店「菱田屋酒場」(お酒は二十歳になってから)。「キッチン南海」の黒いカツカレーも名物。ネパールカレーの「MUSKAN」、近くにはサンドイッチストア「STAN」も。ここ三年はオンライン開催が続いているが、私の所属する比較文学比較文化コースでは「角屋」のミックスサンドで秋にサンドイッチパーティーが開かれる。「TOKYO PASTA WORKS」ではその「角屋」の店員さんお墨付きの生パスタを。一九四九年創業(教養学部と同い年)という「太田屋」は、精肉店の弁当だけあって、ミートボールと揚げたての唐揚げが人気。韓国料理の「박식당」(パクシクタン)はサムギョプサル丼などのテイクアウトもできる。スイーツでは、「IL BIGNÈ」(イルビニエ)の定番のシュークリームはこの三月で販売終了と聞く。隣はティラミス専門店の「Tiramisu Home Made」。
 体育館側の裏門を出た界隈では、蕎麦の「絆」は天ぷらとごはんの付いたランチメニューがお得。「山手」は、ゆきラーメンが名物。隣には弁当の「たけ」がある。ラザニアなど、「Letterpress Letters Canteen」の日替わりランチはInstagramで確認。隣はサラダ専門店の「ケールの王様OVERLAP」。
 野球場の土手の桜並木を通って北門を出る。三田用水の暗渠にほぼ沿ったコスモス(航研)通りを左に少し歩くと山小屋風の「フレッシュネスバーガー」一号店が見える。さらに進むと、生ハムとチーズなどイタリア食材の「PIATTI」(ピアッティ)や二郎系ラーメンの「千里眼」がある。夏季限定の冷やし中華も人気。向かい側のビル四階「俊樹」では和洋のランチを。逆に門から右方向に歩けば、生マッシュルームを使ったサンドイッチなどの「BONDI」。その先の「THE CO­FFEESHOP ROAST WORKS」の厳選されたコーヒーも是非。門に戻り、通りを渡ってすぐのところにはアコウダイなどの焼魚定食がお薦めの「うしお」、そのまま進むとフレンチの「Chambre Avec Vue」(シャンブルアヴェクヴ)がある。「岬屋」の黒飴、夏の水羊羹と秋の栗蒸羊羹(竹栗蒸)も名品。渋谷富ヶ谷二郵便局の先の「むぎ」では豊洲の美味しい魚を楽しめる。メニューは日替わりだが、冬にナメタガレイの煮つけがあったら是非召し上がれ。

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(超域文化科学/国文・漢文学)

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