HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報646号(2023年6月 1日)

教養学部報

第646号 外部公開

<時に沿って> 「社会」と教育の間で

髙橋史子

image646_04_3.jpg 二〇二三年四月より地域文化研究専攻に所属し、「人間の安全保障」プログラム(HSP)やPEAKの授業を担当することになりました髙橋史子です。
 専門は社会学、教育社会学で、主に移民の子どもの教育について研究してきました。社会の多民族化や多様化を背景に、教育において多様性と平等をどのように両立することができるのかということを探究しています。外国籍の生徒が多い学校や彼らを支援しているNPOの方々とともに、民族や文化による差別や不平等を是正するための調査研究を行い、教育実践に結びつけることを目指しています。
 昨年までは、教養教育高度化機構 社会連携部門にて、学外の企業や団体の方々と新しい教育内容や教育方法を開発することに取り組んできました。
 研究における質的方法の一つでもあるインタビューとキャリア教育をかけあわせたような「20年先輩のリアルを知りにいく――きくこととつたえることのワークショップ」という授業では、人に話をきくという行為について考えるさまざまなワークを行った上で、履修生一人ひとりが卒業生にインタビューを行い、卒業後のみなさんの歩みについてお話をうかがいました。
 また、「ソーシャルビジネスをデザインする〜課題発見と解決のアイディアの創出へ」という授業では、企業のESG経営を支援している方を講師としてお招きし、ビジネスによる社会課題解決を目指して、ビジネスモデルの学習・応用などを行いました。さらに、ビジネスコンサルティング企業との連携授業では、学生と同世代の若者が抱く価値観や将来の社会像などを調査し、必要なビジネスアイディアを練るというグループワークを行いました。
 四月から、このような社会連携部門での授業は継続しながら、新たに"Education and Society in Japan"や"Identity, Culture and Education"など専門領域の授業を英語で行っています。PEAK生や留学生を含む多様な文化的背景と経験を持つ学生のみなさんと、教育格差の問題や、エスニシティ・文化と教育の問題について議論できることは知的刺激の連続であると同時に、チャレンジングでもあります。生まれた場所、言語、文化、宗教、ジェンダー、セクシュアリティ、エスニシティなどの違いによって持ち寄ることのできる多様な視点、経験をアカデミックな議論にいかに活かせるか、微力ながら精一杯努力したいと思います。
 こうしてあらためて考えてみると、社会連携部門では主に学外の「社会」と大学教育を結びつける試みを、そして専門の授業では多様な社会と教育の結びつきを考察しているのだなと気付かされます。今後も引き続き、「社会」と教育の間で模索を続けていきたいと思います。

(地域文化研究/PEAK)

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