HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報646号(2023年6月 1日)

教養学部報

第646号 外部公開

<時に沿って> これからもカビ臭く

佐々木悠介

image646_05_1.jpg はじめまして。大学院総合文化研究科超域文化科学専攻比較文学比較文化コースに着任した佐々木悠介です。前期課程では英語部会に所属します。
 専門は比較芸術、とくにフランス語圏、英語圏、日本を守備範囲としていて、これまでの主な研究対象は写真でした。地道な図版資料の調査と写真について書かれたテクストの分析から、写真というものに纏わりついた様々な言説を解体するというのが私の関心です。コロナ禍で海外での資料調査ができなくなり、研究に不自由が生じましたので、その間に何か日本国内でできることをしようと思って、以前から懸案だったアダプテーション論(文学作品の映画化など、おもに異なるジャンルに跨る翻案を対象とする研究)に本腰を入れて取り組み始めました。ところがこれも最初のうちは良かったのですが(たとえば映像作品なども、多くはディスクを取り寄せたりオンラインで閲覧したりすることが可能です)、やっているうちにどうしても、海外のアーカイヴに保存されている脚本とかそういう物のほうに興味を惹かれてしまいました。自分には結局カビ臭い研究スタイルが向いているのかもしれないと、改めて自覚したところです。学生時代と違って、大学の仕事をしながら資料調査を続けるのは大変ですが、ちょうどコロナの影響も薄れてきたようですし、地道に進めて行きたいと思います。
 語学教育については、ほかの大学に所属していた昨年度までの六年間も、おおむね週に一度、駒場のフランス語科目を担当していましたし、その前は英語科目を担当していました。そう書くとまるで英語もフランス語もどんと来い、というように見えますが、全くそうではありません。そもそも母語である日本語も怪しいことがあるのでこれを〇・七言語と数えると、英語は生粋の仙台生まれ仙台育ちの仙台弁グリッシュと呼ぶべきもの、フランス語も似たようなもので、それぞれ〇・三言語というのが良いところ、合わせても一・三言語にしかならない計算です。私が研究活動をしている比較文学という分野には、伝統的に、次から次へと色々な言語に手を出してモノにしてしまう研究者がいるのですが、私は到底その系譜に連なることはできそうにありません。一方、駒場にはいまやトライリンガル・プログラム(TLP)というのがあって、第一外国語と第二外国語を同時並行的に高いレベルで特訓している学生さんたちがいますし、第二外国語のラインナップにない珍しい言語に次々と手を出している学生さんたちもいます。そんな眩しい若者たちを遠目に眺めながら、私は今日も辞書を引き引き英語とフランス語と格闘しています。
 こんな頼りない教員ですが、これからどうぞ宜しくお願い致します。

(超域文化科学/英語)

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