HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報651号(2024年1月 9日)

教養学部報

第651号 外部公開

<時に沿って> 原点と未来

三宅敬太

image651-6-3.jpg  二〇二三年十月に、広域システム科学系に助教として着任しました。私は三宅敬太と申します。岡山県で生まれ育ち、その後大学で静岡県へ移り住みました。静岡大学・理学部では、成川礼准教授(現在は東京都立大学)のご指導のもと、光生物学を中心に、光合成微生物シアノバクテリアの光応答に関わる分子・現象の生化学・生理学的な研究を行い、銀杏並木を抜けた先にある研究棟で学位を取得しました。学位取得後、東京大学・大学院新領域創成科学研究科で学振研究員として岩崎渉教授の研究室に在籍し、光生物学の背景に生物情報学を取り入れ、環境における光利用戦略に関する研究を柏キャンパスの新領域生命棟で行いました。そして、駒場キャンパスに着任してからは、銀杏並木を抜けた先にある16号館で微生物の光に対する生命現象について引き続き研究しています。この駒場キャンパスに来て一ヶ月が経ち、銀杏の匂いを感じ、学士・修士・博士での研究生活を懐かしく思い出しています。

 時に沿って、自分の原点について振り返ってみたので、それを自己紹介としたいと思います。自分が生命に興味を持った最初の記憶はいつかと振り返ってみると、幼稚園の頃にストローで骨格模型を作っていたのを鮮明に記憶しています。自分の体を手探りしながら作った模型は到底出来が良くないものでした。ただ、当時なぜそんなことをしていたのか、と今になって考えると、目に見えないこれはなんなのだろうかと思い、それを見てみたいという気持ちで作成していたのだと思います。そして、小学生の頃には、ダンボールに敷き詰められたミカンの表面に青カビが広がる様子を観察し、「何が広がっているのだろう」と考えていました。それと同時に、「どうやって・なぜ広がっていくのか」という疑問が湧き上がりました。

 こうした経験から、「目に見えない生命や生命現象の仕組み」に興味を抱き、それを「可視化する」ことが私の原点にあるのだと思います。これまでの研究において、分子生物学を用いて「目に見えない生命現象の仕組み」を可視化し、環境ゲノム解析などの生物情報学を用いて「目に見えない生命」を可視化してきました。そう考えると大きな意味では幼少期からの原点のままに生きて来られて、幸せだなと感じます。そして、これからも「一研究者」としての歩みを進める中で、この原点に立ち返りながら、これまで見えていなかった生命現象を「科学」で可視化していくために、日々精進していきたいと考えています。

(広域システム科学/生物)

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