HOME総合情報概要・基本データ刊行物教養学部報652号(2024年2月 1日)

教養学部報

第652号 外部公開

<時に沿って> 駒場での多様な学び

阿部崇史

image652-6-03.jpg 二〇二三年十一月一日付で、国際社会科学専攻の助教に着任しました。専門は政治哲学・現代政治理論で、平等や責任といった規範ないし理念の観点から、政治や政策の研究をしています。また、主に社会学など他分野の研究者との共同研究プロジェクトを立ち上げ、貧困や教育といった社会的課題に対する提言にも取り組んでいます。

 私は、学部前期課程、大学院修士課程、同博士課程と、約十年間、駒場で学び研究を行ってきました。今回、そんな愛着のある駒場の教員の一員となり、とても嬉しく思っています。教養学部の一年生として駒場で学び始めた頃の私は、研究者としてのキャリアを歩むとは想像すらしていませんでした。もともとは弁護士を目指していたように、将来は直接的に人の役に立つ仕事をしたいと思っていたからです。そんな私ですが、後に大学院の指導教員をお願いする森政稔先生の社会思想史を始め、駒場でいろいろな授業をとるうちに、学問的に深く考えることの重要性と楽しさを知りました。そして、法律を学ぼうと思い大学に入ったはずが、社会思想史や政治哲学を始め、いろいろな学問の考え方を知りたくなりました。さまざまな学問の中で考え、時には学問の垣根を超えて考えていく駒場のスタイルが、私には合っていたように思います。そのため、一度は弁護士を目指して法学部に進学したものの、大学院では国際社会科学専攻に進学して政治哲学の研究者を目指すことにしました。

 私の政治哲学の研究は、現代の社会的課題の解決を目指して、規範的論点――貧困を例にとれば、個人の責任はどのような条件で問いうるのか、責任を負うべきなのは誰なのか、など――を検討するものです。また、博士号を取得した後に立ち上げた共同研究では、学問の垣根を超えた学際的な視点から、社会的課題の検討を行なっています。これらの研究は、困っている人たちを助けたいという当初の目標に対して、弁護士としてではなく研究者として取り組むものだと言えます。また、学際的な共同研究を立ち上げたのは、駒場で学んださまざまな学問の観点を取り入れることが、現代社会の課題解決に不可欠だと思ったからです。こう考えると、駒場で過ごした最初の二年間でさまざまな学問に触れられたことが、私の人生にとって大きな意味を持っていたと思います。

 これを読んでくれた学生のみなさんは、さまざまな目標をもって大学に入学したと思います。ぜひ、駒場で多様な学問を学ぶことを通じて、目標に取り組む自分なりのやり方を見つけてもらえれば嬉しいです。また、私自身も、駒場の学際的なスタイルを受け継ぎ、研究・教育をより発展させていきたいと思います。

(国際社会科学/社会・社会思想史)

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